MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
本日のオードブル
第62回

戦うフラミンゴ
 
木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
16年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は夏目漱石、中谷彰宏、F.サガン、プルースト


     ”1番、足をかけるんじゃない!”

             ”7番、早く服を着なさい!! ” 
   

 

       


戦うフラミンゴ




乳白色の泡だらけお湯の中でリサコは自分の足先を見つめる。浴槽からはみ

出したつま先が悲しい。マンションのお風呂はどうして足が全部伸ばせないよう

にできているんだろう?あたりにはブルガリアンローズの香りが立ち込めているは

ずだが、今の彼女はちょっとフクザツだった。友人のかおるは、離婚して新しい

仕事を始め、新たな生活を始めると決意を話した。その彼女が旅先から送って

きたお茶はルビー色をしていた。濃厚な酸味と甘みが那須高原の清涼な空気

のようだった。どんな気持ちで旅に出たんだろうか?リサコはすらりとした美人の

かおるを思い浮べて、勇気と潔さに打たれた。そしてこれから戦う彼女に、心地

よい部屋を作ってあげられたらとなあと思った。
                           


 T社の営業マン瑶子は、細くとがったつめで大きなカーテン生地の見本帳を1

枚1枚めくる。「どうでしょうか?最新のフランスのメーカーのものです」「う~ん、

どうかな、わかりにくいですよね。フランス人がイメージする東洋風?」「では、そ

のプロモーションのカタログを」と、薄い小冊子をぱらぱらとめくりながら、施工例の

ようなものを見せる。「うぅん、なんともいえませんね」リサコは、ほこりっぽい廃墟

になった屋敷の中にカーテンがつるされているような小冊子に目をやる。ジャン

クスタイルというのだろうか、古びた猫足の大きなソファー、塗装のはげた“ついた

て”にもいろんなカーテン生地がひっかかっている。別のスイスのメーカーにも同

じようなイメージ写真があったのを思い出した。子供の靴が片足だけ転がってい

て、ガラスの破片が散乱する薄暗い部屋。その窓には裾が床にたれたレースの

カーテンがぶら下がっている。無数の丸い穴があいているのがデザインらしい。

“これじゃ、まるで犯罪現場だわ”「モダンなのか、前衛芸術なのかわかりません

が、かっこいい演出はわかります。でも、それを実際の生活に落とし込むには程

遠いアプローチの仕方のように感じませんか?」リサコは2年前、インテリアのリフ

ォームをした若い女性の部屋を思いだしていた。“カブキ”と名づけられたイギリ

ス製の壁紙は真紅と濃いピンクを混ぜたような色で、顔ほどもある大きな菊のご

紋がプリントされていた。ショッキングピンク、ローズレッド、朱赤のシルク生地を使

った部屋は、オリエンタルムードを醸し出し、上下の判別がつかない絵画が優艶

な香りを放っていた。ガラス製ビーズのシャンデリアの下にうら若き施主は仏像を

飾った。少数だが、そんな個性を求める人は確かにいる。             


 「でもね、30代以降の女性たちはみんな輝いていて、仕事にも趣味にでも打

ち込んでいますよね。離婚して新たな生活を切り開いてゆく勇気と意欲にあふ

れている人たちも大勢いるし。でもみんな、ぎりぎりで、無理している人たちが多

いから、私のところに来る女性たちは癒される空間を切望しているだと思うんで

す。心が穏やかになるようなインテリアを欲しがっているんだと思うんです。だか

ら、もうちょっとわかりやすい柄とか、優しい色合いが欲しいんですよね~」「それ

に、私たちが今、クラシックと呼ぶヨーロッパのインテリアは、15世紀にはほぼ完

成していたんですよね。ハプスブルグ家のマクシミリアンとブルゴーニュ公国のマ

リアが結婚したこのころにですよ。日本のインテリア事情は、実に500年遅れて

いることになりませんか?遅れているというには語弊があれば、方向性が違って

いた、かな。だから、この前衛芸術のパンフを見て、自宅の低い窓にかけるカー

テンのイメージが湧くとは思えないんですよ」、と彼女はT社の瑤子に訴える。オ

ーストリアの小国、ハプスブルグ家のマクシミリアン1世は、今のフランスの国土

の原形となったブルゴーニュ公国の文化、芸術、インテリアに触れてそのすごさ

に度肝を抜かれたといわれている。「私たち日本人が模倣し続けても、根底に

流れるインテリアに対する捕え方には大きな違いがあるんじゃないかと思うんで

す。15世紀って、室町時代ですよね。そのころから、今の私たち日本人が憧れ

を持って接するようなインテリアや芸術が育まれていたわけですから、鎖国を恨

むしかないでしょうけど。この前衛芸術作品のカーテンを多くの人が理解して喜

んで部屋にかけるようになるには、あと400年かかるということでしょうかねぇ?」



 次の日は、別のインテリアメーカーの営業のユリがやってきた。ユリが広げた最

新の見本帳は、30cmほどの厚みがあるおきなものだ。「モダンな傾向は続くよ

うなので、当社の路線もこのように変わってきています」といって広げた写真はど

れも薄暗い。ベージュ、グレー、ブラウンといったダークな色合いで占められてい

る。「真っ白はありません?」「白はありませんね。ベージュしか、」「最近特に、

白いカーテンの要望が多いんですけど、」「そうなんですか?でも今の傾向は和

モダンですよね。モデル(ルーム)ではすべてこんな路線ですけど、」「それしか

ないからじゃないんですか?」「だいたい日本のインテリアは新しいホテルが牽引

しているように思えてならないんですけど。どこも”和モダン”の要素が強いですよ

ね。都内に新しくできたホテル、全部泊りましたけど、あまり感動はしませんでし

た。それに外国人の比率がかなり高いと感じます。だから必然的に、和テイスト

を加えたモダンになるんじゃないのかな?彼らは、ヨーロピアンスタイルを日本で

は味わいたくはないでしょうから、」「それなら、モダンでもラグジュアリーのカテゴ

リー、そちらをお勧めしてくださいよ、」「でも、LUXURYの綴り、間違ってますよ

ね、Aはいらないでしょ」リサコは重厚な見本帳に大きく印刷された「LUXUAR

Yの文字を指し示した。」「え、そうですか?ホントに?」「社内で問題にならなか

ったんですか?」「うぁ、初耳です!」「まあ、意味は通じるからいいんでしょうけ

ど。御社はインポート物の生地が中心だからねぇ、」気づいた人もいたかもしれ

ないが、誰も指摘しないというところが、日本文化を表しているような気もした。


 先週だけでリサコは4社の展示会に行き、来年の新商品を発注してきた。その

ほかにも、インテリア、ウエア、雑貨、いろんなメーカーの営業担当者は毎日やっ

てくる。そのたびに仕様、色、販売方法に厳しく注文をつける。つけたからって、

それがすぐに反映されるわけではない。でも、彼女は16年間も抗議し続けてい

る。営業担当者は必ず反論するが、そのたびに彼女が必ず言うせりふがある。

「これを買うお客さまは私よりずっと厳しい目を持っているのよ」と。
          


 もう、20分も、リサコは足がはみ出す浴槽に浸かっている。17年前から新築

マンションの間取りが相変わらず、リビング主体に作られている現状を憂う。ベッ

ドにのらなければ、窓が開けられない狭い寝室、低い窓を思い、フクザツな心境

になっているのである。これから新しい人生を切り開こうとするかおるは、新生活

の前に“出もどり”で実家に住むといった。「かおるちゃん、“出もどり”を変換する

と、“デモ鳥”になるのよ。なんか、デモしている鳥みたいじゃない!かおるちゃん

はさしずめ、解き放たれたフラミンゴって感じ。“デモ鳥フラミンゴ”よぉ」。


 リサコはとうの昔から、インテリアメーカー、パジャマメーカー、いろんなメーカー

に抗議デモをし続けてきている“元祖デモ鳥フラミンゴ”でもある。
          






















リサコラムに関するご意見、ご感想はこちらまで。                

mmm@madame-watson.com

お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。

必ずご返事いたします。




                     

木村里紗子 Risaco






* PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.