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リサコラム
連載200回
本日のオードブル


第2回


三途の川

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
18年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒は強くない。
好きな作家は夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、マルセル・プルースト


   
「この古い部屋をどうモダンにするか、それが問題!」
 「どうやって逃げるかが問題だと思いますがね。
   もう窓まで川の水が...」
 
      
  





三途の川




二度も口に出すのは、恥ずかしいような名前ですが,,,」B子はKの笑

いをさえぎりました。「ダントッツィー、
それで映画の“トッツィー”と

何の関係があるんですか?」ラ・フランス氏は半目を開けて聞きました。

「実は、ないんです。ただ、面白いかなと思って」「
面白いじゃない、

すか」とKは笑い続けながらも賛同しました。ラ・フランス氏は得意のニ

ヒルな笑みを浮かべておりました。「それじゃ、決まりですね。作戦のコ

ードネーム『ダントッツィー』OKですね?では、今から説明しますよ」

「コードネームかぁ」「コードネームね」「かっこいいでしょ?」「スパ

イ大作戦って感じですね」Kは手を挙げ、「それじゃあ、私が司令官でし

ょ?」言うと、B子は「残念ですが、今回は私が司令官です」と小さな手

帳を出すと、「カフェバーでね、思いついたんです!」と、ボールペンで

書き散されたイラストのようなものを2人に見せました。


 「まず、コードネーム『ダントッツィー』を始めるに当たり、私たちの

一番得意なことは何だと思いますか?」B子は二人の聴衆を眺めました。

すぐにKが「誰もやらないような妙なことを考えつくことでしょう?」と

にやにや笑いながら答えました。「まさしく、その通り!」「妙なことを

やって、ダントツになれるんですか?」とラ・フランス氏は眉間にしわを

寄せて、椅子に寄りかかりました。「それはやり方によりますが、まずス

ピリッツとしては、それでいいと思うのです。つまり、賞金なしのコンペ

でも、面白がれる熱中人がこの作戦に向いています」「なるほど、B子ら

しいね。熱中人と変人のせめぎ合いか?」「そこそこ、そこです!熱中人

は半面、変人ですよね」B子はわが意を得たりと、右手の人差し指を立て

ました。「そうなんですよ。エイドリアン・モンクがいい例です!彼は、

超優秀な名探偵の反面、限りない恐怖症を持つ変人でしょ。それが必然な

のです」「分かりました、司令官さん。この際、熱中人&変人、その線で

行きましょう」変わらずニヒルな笑みをたたえるラ・フランス氏。「それ

では、Kさんは補佐官で大道具係に。そしてラ・フランス氏は当然ですが

カメラマンを。そして経費削減のためレール取り付け職人も兼任、お願い

します」「ああ、いいね~」とラ・フランス氏はだるそうな右手を低く掲

げました。「では改めまして、サンダーソンのダントツ優勝作戦のコード

ネーム『ダントッツィー』、チームメンバーを発表いたします。B子は脚

立の一段目に乗ると「まず補佐官と大道具担当にK。カメラマン&レール

取り付け職人にラ・フランス氏。アイロン担当に“アツコ”。すべての作

品に完全無欠のアイロンをかけてもらいます。次に花のディスプレイ担当

に“ユカ”。仕上げの花のデコレーションを完璧に遂行してもらいます。

次にチームが誇る縫製担当の“シマちゃん”には、未公開の縫製品にも挑

戦していただきます。次にキルト部門はIさん、そして家具部門の責任者

“ヤッシー社長”もしっかり捕まえておきますから。そして、今回、光栄

にもデザイナーと宣伝部次長を兼任致します司令官のB子でございます」

と述べ、うやうやしく頭を下げました。それでは、皆さま『ダントッツィ

ー』チームの固い団結をここに誓いましょう!」Kはやる気満々の様子で

「誓います!」と言い、ラ・フランス氏は変わらず椅子の背にもたれかけ

「誓いましょう」と言うと横を向いてため息をついておりました。


 「それでは具体的なプランは、これからデザイン画を見せながら説明し

ますが、まずは、熱中人と変人の定義から
...」とB子が二人に向き合うと

ラ・フランス氏は、「その定義はすっ飛ばせませんかね?」と少々うんざ

りした様子で言いました。「気持ちはわかりますが、この場合はその違い

から説明したいんです」「はあ、リッツ・カールトンのクレドと同じだと

言いたいんですか?」とラ・フランス氏。「その通りです!」「第一に、

熱中人はそのものにかける情熱が変人並みということです。そして、真の

変人は、熱中人の最高峰に位置し、変人呼ばわりをされることを恐れない

人のことだと思うのです」「つまり、ふたつとも同類だということか」め

げずにB子は続けました。「天才と呼ばれる人は、別名、変人とも呼ばれ

るはずです。なぜなら、凡人からは理解できない境地に居るからだと思い

ます。過去の偉人伝をひも解くまでもなくです。だから今回はその境地に

触れるくらいに熱中人になっていただきます」


 B子は天才という言葉に、学生時代にフランス語の合宿で一緒になった

ひとりの天才学生M君を思い出していました。天才という話をするとその

M君がB子の中では代名詞になっていました。いろんな大学から先生の推

薦状を持って集まったフランス語学科や仏文の学生たちの中で、彼一人、

法学を専攻しておりました。精鋭の教授陣を前に、少々小太りの彼はこん

な簡単なもの、まじめにできるかというかのように、毎日、鼻風船を膨ら

ましながら、居眠りばかりしていたのです。そして、ある日、先生はフラ

ンス語の名詞のなかで、一番長い名詞を知っている人は?と挙手を求めま

した。相変わらず半睡眠状態の彼はすっと目を覚ますと一番に手を挙げ、

すぐにホワイトボードの左端につかつかと歩み寄りました。それからボー

ドの左端から右端まで約5m、永遠と続く長いフランス語の名詞を書き連

ねました。「○○○
症候群です」と言うと、また居眠り体制に戻りまし

た。フランス人の先生も、NHKのTV講座でフランス語を担当している

先生も、開いた口がふさがりませんでした。彼はフランス語の他にも、英

語、中国語にも精通し、毎日昼休みには偉い先生を捕まえて、政治・経済

・文化、あらゆる分野の熱中人的議論をふっかけました。そのうち先生方

も彼を敬遠するようになったほどでした。その合宿が終わってしばらくし

たある日、彼は学生たちと先生全員に自分の手料理でもてなすパーティの

招待状を送ってよこしました。頭がいいだけではなく、料理も得意なよう

でした。しかも、レターセットから垣間見えるセンスも抜群でした。その

後フランスの大学で難しい免状を取ったとかで、そのコピーとまたパーテ

ィの案内状が送られて来ました。


「つまりですね、私は思うんですがね、オリンピックで金メダルを取る人

とか、スタープレーヤーとか、学年で1番の人たちは常にいつも1番でし

ょう。しかも、みんなダントツの1番じゃないですか。不安のないダント

ツの1番なんですよ。そこが2番以下と1番の違いなんだと思うんです。

つまり私のこれまでの敗北の歴史から、1番の人間たちを横眼で見ながら

研究してきた結果なのですが、1番の人と2番以下の人の間にはね、

『三途(さんず)の川』のような容易に越えられない川が流れているんだ

と思うんです」                     


                              つづく









       

            ブルーの飾りのトリムをよく見ると....

                  
          


        斜め30度、アイロンでトリムを立ち上げました。

        ここまでやりますかね~写りもしないのに。











 2010年7月9日より「
」が始まりました、


            次は7月23日金曜日。次なる展開はいかに?

            それまでどうかご機嫌よろしゅう。







                                      木村里紗子






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