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リサコラム
連載343回
      本日のオードブル




第1回


海辺の村


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)は
2012年12月で6刷)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト
、クリス・岡崎、他たくさん。


街路樹に、石畳みの道路と歩道。
左手にはピンク色の壁とブルーグリーンのテントのある
2階建てのカフェ。

左手にはおしゃれな窓辺のあるホテル。その向こうは
トリコロールに塗ったテントと可愛い窓のある
インテリアショップ。
その奥はベージュの壁に大きな葉っぱの絵のある
きっとこれは、観葉植物のお店かな。
ずっとずっときれいなお店。
ニースの海よね。

「だってニースの海も つながっているよ グローバル社会」

よかった~。


 
      
  





 

海辺の村

                      


 

 電車は海沿いの道に沿って時計回りに大きな弧を描いて回り始めた。


 「海は青い 波は白い 私は単身」ケイタイからそんな川柳を投稿した。手持無

沙汰になぜか、初めてそんなことをやってみた。

 こんなバカみたいな川柳、川柳でもないよね~。ふふふ、ほんと。そして、閑散

とした電車の中を見渡した。


 「天気は最高 どうなるわたし これから先」サラリーマン川柳なんて、そんな

サイトに、私投稿しちゃってるの?そんな自分にちょっとびっくりした。

「ついでだけど 空は青い やっぱり左遷かな」



             



 電車の窓を開けると、春の生ぬるい風が吹き込んで来た。

「風ぬるい 過疎の村」


 ランドセルをしょってる女の子がひとり、私のななめ前の向き合った席に座って

いるだけで、この車両には他に誰も乗っていない。小学5、6年生くらいかな?私

の方を見ると、ぺこりと頭を下げた。「あれっ?」私もつられて頭を下げた。



             



 「頭を下げる ランドセル どうしたものか」田舎の子供は大人を見ると頭を下

げる習慣になっているのか、私は初めての体験にびっくりした。


 サラリーマンの宿命に逆らうことはイコール、リストラの脇道に落ちることを意

味しているから、今さら言ってもどうにもならないけれど、でも、あの時どうして

「田舎暮らしもやってみたいです」なんて忘年会で言ったのかな~?返す返すも悔

しくなる気持ちをこらえながら、窓枠にほお杖をついた。


 私の顔半分はすでに田舎の空気を浴びて、田舎の暮らしを想像し始めていた。

「車通勤できるじゃなか 田舎営業マン」不思議なことに川柳とは言えないような

言葉遊びに悦に入り始めていた。そうだ。徒歩でも通勤できるのだ。満員電車に乗

らない生活。どんなに仕事が遅くなっても、ドアtoドアで10分の毎日。

「雨の日は 車で通勤 余裕の1分」



             



 「ステキじゃあな~い!電車通勤しない生活よ~」同僚、友人たちはみんな同じ

贈る言葉をくれた。「地下鉄にも乗らず、営業はぜ~んぶ車で、しかも渋滞なし。

こんな極楽のような仕事あるぅ?」「順番待ちのランチもない暮らしよ。ああ、す

てきぃ~!」私はひそかに反撃した。心の中で。「友達なしの、仕事帰りに愚痴を

いう居酒屋もなし。いや、まあ、おしゃれじゃないけど居酒屋くらいはあるよね。

1軒くらいはね。でも、クールなバーはないよね。あなたも大好きな鍵盤の帝王、

オスカー・ピーターソンを黒人のイケメンピアニストの歌うバーなんて。絶対に」

その代り、演歌でも聞きながら、居酒屋で生ビールにプロ野球でも見るのかな。そ

れも慣れれば、きっと、1年もたてば。そんな風に変わるよね、ワタシ。


 それに私だけじゃあないんだから。この間、NHKで見た、アジアで単身頑張っ

ている女性たちの特集をまた思い返した。まだまだ低い生活レベルのアジアで、英

語でもなく、日本語でもなく、現地の言葉で必死に頑張っているけなげな女性たち

を思い浮かべて、自分の境遇をなぐさめる。それはここ数か月の支えのようなもの

だった。「とにかく 海は青い 夢やぶれはしない」私は海辺の村に左遷されて来

たとは思いたくなかった。もちろん、ここがニースの村なら話しは別だけれど。



             



 湾曲した入江に沿って、ごとんごとんという音を響かせ、速度を落とし、隣の駅

に停まった。無人駅なのか、閑散として静か。3人降り、3人乗った。


 「プラス マイナスゼロで 進歩なし」われながら、なかなか進歩してきたかな

とにやりと笑った。ただ、駅舎の周りのつつじだけが凡庸な赤紫の花びらを少し揺

らして答えてくれたようだった。そんな平凡な花でも無人駅の春を少しは楽しげに

演出しているのかも知れない。


 私の新居はマンションなんてない場所柄、会社が勝手に決めた借り上げ社宅に決

まった。それは下宿レベルらしいから、もちろん大きな期待もできない。大家さん

と同居なんて、どんな生活なのだろうか?お風呂は共同浴場。さらに、自炊は共同

の炊事場か~。どんな感じなんだろう?キャンプみたいなかな?でも、お風呂掃除

だってしなくていいんなら、楽と言えば楽かも。

 「もしかして 楽はさびしい 女ひとり」か~。



             



 春風に右ほほを与えながらもう1一句思いついた。

「はるかぜに ちょっとうなだれ コスモス気分」相変らず海辺の辺鄙な町並みと

畑と田んぼ、雑木林のような中を風景は通りすぎる。もう次の駅のはずだ。アナウ

ンスは、ない。私は駅名の書かれた看板を見つけようときょろきょろした。

「にいつ」これこれ。間違いない。


 やっと電車はその場所に私を送り届けてくれたようだ。ごろごろとスーツケース

を転がして、駅の改札に向かった。アナウンスが聞こえた。「にーす、にーす」

あれぇ?なまっているみたいだ。ニースに聞こえる。


 駅の改札で、駅員に切符を渡そうとして、自動改札をどうぞと言われ、ちょっと

笑いそうになった。改札を出ると「紺碧の海、ニースにようこそ」と垂れ幕がかか

っている?えっ?



            



 私はタスキがけの美しい女性に思わず歩み寄った。「あの、あれは?」しかし、

目に前に広がる駅前の繁華街を見て唖然とした。カラフルなフレンチテイストのか

わいい建物がびっしり。それも石畳の街路樹の横に並んでいるではないの!その突

き当りは紺碧の海。


 「先ごろ改名いたしました。私たちのシーサイド・ビレッジ、『ニース』へ、

ようこそ!」ミス・ニースの女性は美しく微笑んだ。





     





   *p.s. 本日より、タッチを変えて、拙い新シリーズをはじめました。

        「今日こそは 絶対簡単でと 面倒な絵を描く わたし」



   *イラストもストーリーも実在の物とは関係ありません。

   *上のイラストから「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

    毎週火曜日更新連載です。

   * 「リサコラム」は毎週月曜日連載です。



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。



    




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

(Amazon、書店では1,500円で販売しています。)

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,800円にてお届けいたします。  
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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