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リサコラム
連載506回
      本日のオードブル

来のわたし
一番
きなかたち

第9話

「S氏の休暇」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


床は少し
明るい色に変えて、
そこにオレンジ色を帯びた
茶系のじゅうたんを敷いてみました。
天井からレールをつけた天蓋ベッドには
真っ白いカーテンを4か所から下げてみました。
白いヘッドのクイーンサイズのベッドには
麻のベッドリネンがいいです。
オットマンも白いカバーを
かけて、
デッキの
籐の椅子は
新しくして。
アマンプロも
少々年期が
入ってきましたので
リニューアルプランをと思いました。
誠に勝手ではございますが。

 
      
  





       

第9話 「S氏の休暇」



ヴィラの回りを巡らしている庭の向こうでリゾートのスタッフがカートを止めて

ドアベルを鳴らす音が聞こえた。S氏は「どうぞ」と大きな声でスタッフに向かっ

て叫んだ。

             


 「お飲み物をお持ちいたしました」「ああ、ありがとう。そこに置いておいても

らえますか?」氏はそう伝えると、裸足になってベッドに腰を下ろした。


             


 「かしこまりました」S氏はそれには構わず、今にも水平線に隠れそうになって

いる太陽の足跡にじっと目を凝らしている様子だった。こんな時リゾートスタッフ

は声をかけるのをしばらくやめて一緒に夕日の沈むのを眺めることになっている。

そして、ゲストに何かの動きがあったときにはじめて、声をかける。これはマニュ

アルにあるわけではないが、そのスタッフは十分に心得があった。


             


 S氏は後ろ手で体を支えながらオットマンの上に足を投げ出していた。空の上と

下でブルーとオレンジが美しい映像を作り上げている様を見ながら、今、まさにリ

ラクシングモードに入っているように見えた。


 S氏はつい20分ほど前に、セスナ機が運んで来たゲストの一人だが、その他の

ゲストと同じく海外からリゾート目的でやって来た様子の、しかし一人旅のゲスト

だった。


             


 「めったにいないでしょ?こんな場所に一人で来る人なんて」S氏はそんな疑問

の雰囲気を察知したのか、立ち去るタイミングを計っている様子のスタッフに親し

げな声をかけた。スタッフは不意にかけられた質問にちょっと驚いたものの、それ

でも優雅さを漂わせながら答えた。「いえ、そんなことはございません。美しいリ

ゾートを静かにご満喫いただければうれしいことでございます」「そうだね。しか

し、美しすぎるね」


             


 たしかに美しすぎる島に違いはなかった。サンゴ礁の遠浅の海を抱くしっぽの生

えた細長い生物のような形をした島は長さ2.5km、そして幅500mほどで1、2

間もあればハイキングがてら一周できるほどの島。そこにすうと一本の滑走路が敷

かれている。しかし、赤道付近の無数にある島の中の小さな一つの島に過ぎないの

に、そこにやって来る人々は、ロングフライトをさらに乗り継ぎ、最後は小型飛行

機に乗ってこの島にやってくる。そんな人々はハイソサエティ風の家族やカップル

にハネムーナー、そしてひと時羽を休める都会のビジネスマンたちだった。

島の周囲を取り囲むホワイトサンドのビーチが干潮時には対岸の島と地続きになる

という自然のエンターテイメントもそんな地球を半周させてでも、遠来からゲスト

を引き寄せているようだった。


             


 「実は私も一つ小さな島を持っているものでね氏は人なつっこい笑みを浮

かべながらスタッフの方に体を向けた。その顔にスタッフはちょっと不思議な印象

を持った。「そうですか」スタッフはわずかに驚いた風だったが、すぐに表情が和

らいだ。「こんな島なのでしょうか?」スタッフが遠慮気味に尋ねると氏は軽く

手を挙げて、「いい島なんだけどね」とだけ言った。スタッフは推し量って、

「それではどうぞごゆっくり。またディナーでお待ちしております」というと立ち

去った。


              


 次の午前、そのスタッフがビーチハウスでパイナップルジュースの注文をS氏の

デッキチェアに運んでゆくと「昨日はどうも」とS氏が先に挨拶をした。


 「あら?」スタッフはちょっとびっくりした顔になった。「ああ、あれね、」

ゲストは軽く指で頭をこつこつとたたいた。「かつら、いや、ウィグっていうのか

な、長髪でちょっとヤンキーなオヤジ風だったでしょ」と言ったサングラスの中の

目はさらに細くなった。


             


 「ああ~、なるほど、そうでしたか」「まあ、お遊び感覚ね、ここでも面が割れ

てるだろうから。日本人ゲストも多いことだしね」「そういうことでしたか」「で

も、もう面倒くさくなっちゃうよね~、だって、海の底まで透けて見えるような海

でしょ、それに真っ白な砂浜を眺めていたら、どう書き込みされてもいいかって、

ね」


 「そうですね。ご存じだとは思いますが、このリゾートの“アマンプロ”はサン

スクリット語で「平和」を意味する”aman”という言葉とタガログ語で「島」を

意味する”plo”という言葉を組み合わせた造語です。ですから真に『平和な島』

であることには違いありません」「なるほどね~そう言い切れるのもわかるな~。

うん、わかるよ。確かに平和そのものの島だよね。青、白、緑の絵の具があれば、

描けるようなシンプルな自然の美しさだよな~。こんなのに現代人は癒されるもの

なんだよね」「それにサンセットは格別に美しい光景です」とスタッフは海を見な

がら付け加えるように言った。S氏はパ
イナップルジュースを飲み干すと少し黙っ

た後で、またパイナップルジュースを注文した。


               


 パイナップルがグラスのふちに引っかかっている2杯目の黄色の飲み物を運んで

来た同じスタッフにS氏は、「昨日ちらっと話した島の話だけどね、持っているに

は持っているんだけどね、それも30年も前からね」と言った。「そうですか、30

も前から」S氏はうんとうなずきながら続けた。「でも、難しいね~。島を維持す

るっていうのは。必ず船で行かなきゃならないし。そこに人を呼ぼうと思えば、宿

泊施設が必要でしょ。そうなれば、維持、管理する人たち、そして様々な経費が湯

水のようにいるしね。このパマリカン島も、実は個人所有の島なんだよね」スタッ

フは驚きもせず、「よくご存じですね。実はそうなんです」言った。


                


 「ここに人を呼ぶためにはどんだけ大変か、よくわかりますよ。だから、何が高

い、飲み物が、料理が高いとか言われても、そりゃ、東京のど真ん中とか、ミラノ

とかパリのレストランと同じ物が食べられるんだからね、仕方ないよ。それにここ

のシェフもきっとそんなところで修行して来た人たちでしょ。お客さんはさんざん

グルメも経験している人たちばっかりなわけじぁない。そんな人たちがわざわざ

地球の裏側から、地中海もカリブ海も通り過ぎて、こんなちっぽけな島にやって来

てくれるのだから、力、はいるわな~シェフは。世界の有名どころのワインにシャ

ンパンに合う料理を、都会よりおいしく作らなきゃならないんだものね。じゃなき

ゃ、今はみんな文句言うでしょ。こんな離島で何かものを食べるんだって大変なこ

となのにね。そう、島を買ってからつくづく思いましたよ。買った当初はちょっと

印税が多すぎてね、ははは、今はそんなことはありませんよ。まあ、私もまだ若か

ったから、勢いでね、島買って、汚水を海に流さないような先端の設備も入れたり

して。でも、こんなにいろいろ大変だとは思わなかったな。人さまを泊めるってこ

とは、おいしいものを出すだけじゃなくてその人の安全も背負うことでしょ。危険

から守ってやらなくちゃならないし。1円でももらえば、仕事だから真剣になるよ

ね。そんなこんな、いろいろ経験して、結論としては島を個人で持つもんじゃない

ね。それなら、ここに使えばよかったかなんてね。テレビとかいろんなメディアと

かで言えないこともこんなところに来ると、なんか堂々と海に向かって言えるしね

はっはっはっは~ああ、これオフレコでお願いしますね」「ええ、もちろんです。

S様、ほんとうにあけっぴろげで楽しい方ですね。」「そんな風に言ってもらえる

のが一番うれしいね」とS氏は気持ちよさそうに言った。


             


 S氏は2杯目のパイナップルジュースを飲み干すと、「こんなところに来ると、

リゾートの骨休めではなく、ほんとに勉強になるね。僕なんか目いっぱい失敗して

来たからね」と海を見ながらつぶやくように言った。


             


 「S様はコメディアンでいらっしゃると実は他のスタッフから伺いましたが

「まあ、そんなものですね。『サダ・マサシ』で暇なときにネットで検索してみて

ください。一応、歌も作って、歌ってもいる者です」


 「ああ、歌を。ああ、サダマサシさん、ああ、そうなんですか!あの私一つだけ

知っている歌があるんです。『三泊宣言』いい歌ですよね~。日本人のゲストの方

から教えて頂きました。だから日本人の方はみんな3泊しかしないのだそうですね」


 「『三泊宣言』なるほど、それは『関白宣言』に通じるところがなきにしもあら

ずですね。とにかく、島は勉強になります」



   
 

 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

 「もの、こと、ほん」は下の写真から。

              

p.s.1

  ユーモラスでかつ、歯に衣を着せない話しの面白さにコメディアンと
 肩書をされるそうです。
 もちろん、さだまさしさんの架空のストーリーです。
 大好きなアマンリゾートの話になるとつい長く書きすぎてしまいます。
 詩島と名付けた島をお持ちのさだ氏はきっと島の運営に苦労なさっておられる
 はずだと勝手な想像をめぐらせました。

 下の写真はグーグルから借りました、アマンプロのビーチカシータの様子です。
 青い青い海、空、緑、真っ白い寝椅子。20年経過しても、変色も腐食もしていない
 床と屋根。心地よさは人の手が入っているからこその証ですね。














p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

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マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
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