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リサコラム
連載766回
      本日のオードブル

パリのアパルトマンの絵

第3話

「妻の策略」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルー
グレーの
天井から
グレーの
レースの
カーテンが
白いベッドを
取り囲んでいます。
窓にモスグリーン色の
4枚のシェード。白い雲の
デザインがモダンなベージュの絨毯
さて、高級ホテルのようなこのお部屋は
どなたのお部屋なのでしょうか?



 







        

 第3話 「妻の策略」



  

 「作ったもん勝ちよ!」妻はそう言い捨てると、私を置いて人通りの

ない路地を今来た方向と逆方向に歩き始めた。


            


 私たちはその時、パリの路地をぶらぶらと散歩をしているところだっ

たが、私は、つい、新しい家の内装にぶつぶつ文句を言ってしまったの

だ。もちろん、私だって、その話題は厳禁、禁句だとわかっていたのだったが。


            


 私は仕方なく彼女の姿が見えなくなるまで見送ったが、私は彼女がこれ

からどこに行くのかは知っていた。あのイケメンの事務所なのだ。


            


 「ふ~ん、なんだと?作ったもん勝ち?」私はこのところ、毎日のよう

に郵便箱をいっぱいにする高級ブティックからのDMやカード会社の請求書

に吐き気を覚えていたから、ついそんな言葉が出たのだと思うが、パリに

来てからというもの、私たちはほぼ毎日のように口げんかばかりしてい

た。だから妻も私もいい加減、口けんかにはうんざりして、その原因に

なる新居の、特に内装の好みの違いについては話題にしないことにして

いたのだ。


            


 それでも私はまだ未練がましい思いを抱いていた。そもそも1階の庭付

きアパルトマンを買ったのは日曜大工という、以前の趣味をまた始めよう

と思ったからだったし、これからゆっくり時間をかけて自分好みに改造す

るにはこれほどいい物件はないと直感したのだ。1年、いや、2年でも3

年かかっても、この手で自分好みの家に作り上げるのだと私は意欲満々で

いた。さらに鬱蒼とした樹木の生い茂る間にテントを張ってキャンプも楽

しそうだと思ったからだ。


            


 なにしろ、すべてのものを処分し、私は当面の衣類を詰め込んだ小さな

スーツケース1個と1枚の絵を持って、そして妻は大きなスーツケースと

業者に運ばせたピアノだけを持ってパリにやって来たのだから、蝶のよう

に身軽そのものだった。


            


 身軽な体でパリの街を歩けば南フランスの田舎町とはくらべものになら

ないくらいに何でも手に入れることができた。食品は高いが、おびただし

い数のパン屋、パティスリー、カフェ、ビストロ、レストラン、店の裏口

をウロウロしていれば、浮浪者が生きていけるくらいの食料は手に入るは

ずだ。そして書店、劇場、映画館に美術館。さらに新居のすぐ近所には週

末、評判の市が立つ。私は実は金物屋巡りも目当てだった。水道、ガス工

事は除いても、内装、庭づくりの仕事はわんさとあるはずだった。そこで

私の腕を振るう予定でいたのに、現実は私の出番は全くなかった。


            


 インテリアも、家具の好みもひっくるめて言えば家に対する考え方は、

妻と私は正反対だったのだ。実は彼女は依頼しようと兼ねてから目をつけ

ていた有名な設計士がいたことがこの家を買うことになって初めて分かっ

た。彼女にとってのそのイケメン設計士は、私には全くイケメンには見え

ないが、彼女に高価な図面をひいた。それからというもの、妻と私とで家

づくりに対する議論が数か月続いた。そしてやはり私の負けが確定した。


            


 まずは新居に住めるようになるまでは、私はひとり、ランクを落とした

近所の安価なホテルに泊まり、妻は5つ星ホテルを泊まり歩いた。そして

彼女はしばしば16区にある設計士のオフィスを訪れては、彼をホテルの

高級ランチに誘ったりもしていたようだ。


            


 私が見るところによると、彼女はまるで映画の主演女優にでもなったつ

もりで、パリの街を毎日てくてく歩き回り、高級ブティックやパフュムリ

ーで冷やかし、時々は一体どこに来て行くのかというような肩のないカク

テルドレスや、30ml5万円もするような香水を買って来た。また、

パリに住む友人を誘ってはビストロでアペリティフのついでに私の悪口

を言った。さらに多国籍料理店で目新しい料理を堪能し、週末は劇場

に出かけた。


            


 オペラだの、コンサートだのまるで興味も関心もない私にとっての関心

事と言えば、二人の年金生活者がいつ破産するのかと予測を立てるくらい

しかなかった。つまりは、請求書の数字が通帳の数字を上回るが先か、

人生のピリオドを迎えるのが先か、どちらかの競走になるだろう。


 結果、私たちの部屋はそれぞれ自分の好みを反映していいことにすると

いうことだけは私の意見が通ったものの、リビングは私好みのロッキング

チェアが似合わない、きらびやかな雰囲気に押し切られた。


            


 妻の部屋はと言えば、以前はパステルカラーの壁紙やカーテンに、随所

にレースやフレンジがあしらわれ、雑貨や小物が所狭しとあるラブリーな

部屋だったのが、今回は驚いたことにスッキリとモダンな、そしてやや

ダーク気味な色合いのインテリアでまとめられていたのだ。その部屋を

見た時、私はやっと妻を理解した気になった。


            



 彼女は一生、田舎者でいるのが嫌だったのだ。最後はパリジェンヌと

して趣味がよくシックでシンプルな生活をしながら一生を終えたいとい

うことだったのだ。


            


 「作ったもん勝ちよ!」私がこっそり妻の部屋をのぞき見している


と、彼女は先日と同じセリフを私の背中に向かって吐いた。「ああ、

そうだね。精神分析医のアドラーもそう言ってるね」「アドラーじゃ

ないわ。ザッカバーグよ、フェイスブックのCEOよ!」


            


 
「なるほど、またイケメンか…」妻は私が古びた山小屋のバルコニー

からユングフラウを眺めながらビールを飲むという夢を粉々に打ち砕く

だけでは済まないようだった




  




 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

  
 *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 
 女性は素敵なお部屋にするためには策を巡らせる天才。
だと思いませんか?ザッカバーグさん!


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年6月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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