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リサコラム
連載779回
      本日のオードブル

パリのアパルトマンの絵

第16話

「自由に乾杯」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



出窓の
向こうには
ルーヴルが
見えること
広いベッド
朝食は
コーヒー
シャンパン
真の自由を
楽しむなら
それだけでいい
ただそれが、今、一番難しい。




 







        

 第16話 「自由に乾杯」




  

 学生時代の一人暮らしはあったが、これが正真正銘、生まれて初めて

の家出になるだろう。私はそんなことを思いながらソフィと名乗った

フロントスタッフの後ろに従い、これからアトラクションのある遊園地

に行く子供のようにわくわくドキドキしながら、客室への廊下を歩いた。


            


 
「ウォークインで申し訳ない」とソフィの背中に言った。「いいえ、

週末でなければ今は比較的暇な時期ですし、それにちょうどキャンセル

が出たところでしたので。セミスイートの広々としていいお部屋です

よ。もちろん、窓からルーヴルが眺められます」と言ってから、ソフィ

はエレベーターの前で立ち止まった。「階段になさいます?それとも、

エレベーターがよろしいですか?」と尋ねた。私はさんざん歩いた後

だったため、「もう、今日は歩けないかな」と言った。彼女は即座に

察知して私の疲れた顔ににっこり笑いかけると、「お疲れですね。

どちらかにお出かけでしたか?」と言った。「もう、散々歩きました

よ。朝から名所を歩いて巡ってね。エッフェル塔にモンマルトルの丘、

この辺りに来るのは今日3度目なんだ」彼女は、「そうですか。素敵な

1日でしたね。それで今日は家出されて来られたのですね?」とにっ

こり笑った。


            


 
「家出は冗談ですよ。まあ、半分はね。ラ・マルセイエーズを歌お

うと。つまり、束の間の自由を味わおうと思ってね」「なるほど、

そうでしたか。さあ、どうぞ、こちらです」彼女は部屋のドアをさっ

と開けると、中に案内し、私の表情の変化を待った。もちろん、喜ば

しく驚いた表情を。


            


 
mはある高い天井、コーナー窓のある広々としたモダンなデザイン

の新しい部屋だった。大理石の明るいバスルームからは清潔な香りが漂

ってきていた。なるほど熟練タクシー運転手がおすすめするだけのこと

はあると私は思った。


            


 「素晴らしい!ありがとう。満足です。それでは、何かわからないと

きは
電話します」彼女は何かまだ言いたそうだったが、私はチップを

渡して外に押し出すように帰した。ああ、やっと自由の身になった、

と私は思った。それから部屋の中から外の風景を眺めたり、備品を一

々チェックしたりしながら、なるほど、これが5つ星、スモールラグ

ジュリーホテルか。彼女はいつもこんなホテルに泊まっていたんだなと

思った。「私が家探しの頃に泊まっていた星なしホテルとは大違いじゃ

ないか!」と一人叫んでもみた。まあ、いいさ、今回は私の番だ。時に

はこんな無為な贅沢もいいだろう。妻はしょっちゅうこんな無駄な浪費

をやっていたんだからな。しかし、すぐに、突然の家出で着替えの下着

もパジャマもないことに気づき、さきほど追い返してしまったソフィに

電話をかけた。


            


 「この近所に下着やパジャマを売っている店はないだろうか?

できれば一式、買って来てくれたらありがたいのだが」

「実は、先ほど申し上げようかと思ったのですが、私どもでは、

『Home at Hotel』という、通称『家出セット』ですが、

そのようなもののご用意がございます。洗濯済の新品の下着、簡易な

部屋着、パジャマのご希望のサイズのセットをお持ちいたします」

「そうか、それはすごいな。それではLサイズでお願いします」

私はちょっと苦笑しながら電話を切ると、次になすすべもなく、

そうだ、裏窓見物でもしようと思った。ライトアップされたルーヴルの

壮麗な建物の下には多くの観光客が見えた。「いいロケーションだ。

しかも、スタッフがなかなかいい。ま、妻は、ここは知らないだろうが」

と独り言を言うと、ポケットからスマホを出して、金庫にしまった。


            


 数分後、コンコンとノックの音が聞こえた。ドアを開けると小ぶりな

楕円のかごを抱えた老齢な紳士が立っていた。わたしは「ああ、どうも

ありがとう」私が礼を述べながら受け取ると、彼はまるで少年のような

美しい笑みを浮かべて、「いえ、どういたしまして。どうぞごゆっくり」

と言うと立ち去った。


            


 私は早速、シャワーを浴びると、部屋着に着替え、ルームサービスの

中からメニューの上の方にあるサンドイッチとスープ一皿、赤ワインを

一本注文した。そしてテレビのニュースを見ながら夕食を済ませると、

リュックの中から本を取り出し、読み始めた。しかし、すぐに私が帰ら

ないことを妻が心配しているのではないかと気になり始めた。「いや、

電話などするものか、それでは家出ではなくなる」私はそう自分に言い

聞かせた。第一、ルーヴルのそばのこんな高級ホテルに宿泊しているこ

とがわかりでもしたら、面倒だ。彼女のことだから押しかけるかもしれ

ない。私は予防線を張るため、仕方なく金庫から電話を出してアンリに

電話をかけた。午後8時半だが、着信は一件も入っていなかった。


            


 「僕だけど、あれからモンマルトルの丘に行って、ルーヴルの近くの

ホテルに泊まっているんだ」「ひとりか?」アンリはすぐに聞いた。

「ああ、家出だよ」「なるほど、おやじの家出か、なかなか渋いね」と

いうと、彼はゲラゲラ笑い出した。「君に限って、家出とはね~、どこへ

も一人じゃいけない、君がね~」アンリはさらに笑い出した。「君と一緒

にいることにしてくれないか?」「だれがそんな無用な心配をするもの

か!」アンリはばかにしたように言った後で、「OK、わかった。奥さん

から電話が来たらどうにでもうまく答えるさ」と言うと、一方的に電話

を切った。


            


 私はひとり、ロックグラスを傾けながら本を読み始めた。そのうち瞼が

重たくなり、数ページ読んだくらいで、アームチエアの中で眠ってしまっ

たらしく、気が付くともう11時近かった。私はカゴの中からブルーの

パジャマを引っ張り出して適当にボタンを掛けると、久しぶりの巨大な

ベッドにもぐりこんだ。


            


 目が覚めたのは翌朝の5時過ぎだった。熟睡したようだ、私は両手で

手触りのいいシーツの感触に浸りつつ、二度寝を決め混むと、どこまでも

続くかのような広々としたシーツの上で妻のことも何もかもすっかり忘

れて、心地よい眠りを満喫していた。


            


 私には不足していたものは、これだった。やっと仕事人生という束縛

から逃れられたにもかかわらず、私をパリに移住させた運命を恨みつつ、

ずっと後悔を続けていた。でもそんな日々はもうこれっきりだ。そうだ、

与えられた自由を楽しめばいいのだ。私はやっと割り切った思いで、ルー

ムサービスの朝食を注文してからシャワーを浴びた。持って来たのは昨日

と同じ、老齢なスタッフだった。


            


 「よくお休みでしたか?」彼は私よりおそらく10歳は年上だろう。

「ええ。ありがとう。たまには家出もいいものですね」私はそう言うと、

彼は黙ってうなずき、「それではごゆっくりお楽しみください」とだけ言

った。私はスマホをポケットに突っ込み、窓際でシャンパンの栓を抜い

た。普段はめったに飲まないシャンパンだが、今朝はひとりモーニング

シャンパンとしゃれこもうと思ったのだ。


            


 グラスに注ぐとわざわざ窓辺に持って行き、黄金色の泡を朝の光にか

ざしてみた。「ナポレオン一世の略奪品のそばで私は、今、とても

自由だ。ルーヴルに乾杯、自由に乾杯!」そんな独り言を言いながら

私はシャンパングラス3杯を飲み干すと私の中の自由の気運はシャン

パンの泡のように増幅した。それからようやく私はスマホを開いた。


            


 そこには妻からの短いメッセージが届いていた




   


上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.2
 
物思いに耽る男性の顔の絵に、
とても時間がかかりました。
70前には見えませんか?30代にも見える?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2021年9月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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