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リサコラム
連載997回
      本日のオードブル

『ノックの音が』

第12話

「ひとりきりの

クリスマスイヴ」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





雪の中、

洋館の中に灯りが灯っています。

ホテルではなさそうですが、

中でも楽し気な声が聞こえいるような

クリスマスイヴですから。





 



第12話 「ひとりきりのクリスマスイヴ」




 今年のクリスマスで大台に乗ります。愛妻は、8年間私ひとり

で看病を続けた末、15年前に亡くなりました。自分の年齢の話に

なると、自然と誕生日の話になります。キリストさまと同じ誕生日

の人は365人に一人はいるはずで、そんな人が稀有なわけでもな

いはずですが、これまで、クリスマスが誕生日という人に会ったこ

とがありません。


            


 職業は靴を作る、靴職人です。これまでうん十年もずっと靴を

作ってきたことになります。ですから、靴を作る以外に何のスキル

もありませんが、ただ、運転するのが好きなもので、こんな年にな

っても、4、5時間の長時間ドライブもなんてことはありません。

暇な時は、息抜きに丸1日、ドライブをして帰るということもよく

あります。お客さんはみんな顔なじみの人ばかりで、こんな年でも、

馴じみのお客さんが年に1、2回は新しい靴を注文してくださるの

です。だから年末のこの時期は大忙しになります。


             


 妻が他界して、ひとりきりのクリスマスと誕生日を過ごして10

年が経った時、山あいの村に家を持つことになりました。古い一軒

家で、元は教会の牧師館だったそうです。地元の不動産屋の話によ

れば、最初はフランスからやってきた牧師さんが長年住まれていた

らしく、素朴ではあるが、洋館のような外観になっているのは、そ

のせいだそうです。その後、日本人の牧師さんが派遣されて移り住

み、街まで車で4、50分ほどとはいえ、山あいの村は過疎化が進

み、10年前、最後の牧師さんが町の教会に移られた後、牧師不在

の村になり、牧師館が売りに出されたというものでした。


             


 私はたまたまドライブ中に前を通りかかり、その洋館の清楚な佇

まいに惹かれました。それからその建物が売り物だとわかり、すぐ

に連絡を取って、次の機会に中を案内してもらいました。牧師館だ

けで、ミサを行うようなチャペルはありませんでしたから、普通の

家として生活するには特に問題もありませんでした。気に入ったと

ころは、玄関までのアプローチの左右にはモミの木が植えられてお

り、さらに、街とは違ってその辺りに無造作に車を停めることがで

きたところでした。もっと気に入ったのが中庭でした。その中庭

にはなんとブランコがあり、小さな小川まで流れていたのです。

コンビニどころか、スーパーも食料品店もなにもないような、

都会に通勤するにも夜明け前に出なければならない辺鄙な場所

ですが、ちょうど世の中にリモートワークが普及し始めた頃で、

息子がこれからの時代はパソコンができないとだめだと言われ、

70過ぎの手習いで、ネットショッピングらしき仕事も始めた

ところでした。ですから、メールのやり取りで注文は取れるよう

にもなっていました。


             


 靴ならどこでも作れます。それに、何と言っても、私の誕生日

はイエス・キリストと同じですから、この牧師館との出会いは運命

の出会いだと、決めつけたのです。そして、思い切ってその牧師館

を買って移住することにしました。


             


 今の家は借家でしたから、移住するのは簡単でした。建物はほぼ

そのままで、作業場とキッチンをちょっとやり替えただけで、なる

べくそのままの状態で住もうと思ったのです。そのほうが、ここに

住んだ牧師さんたちの慈愛を肌で感じられるような気がしたのです。

しかし、靴職人という仕事は孤独な作業です。常に自分と向き合

っていますから、人間とは実に非合理的にできているとか、なぜ、

自ら大変なことを背負って生きているのかと、この牧師館に来てか

らよけいにそんなことを考えるようになりました。


             


 そして、春に引っ越しをして、夏、秋を迎えました。木型を持っ

ているので、常連のお客さんは相変わらず、電話やネットからいつ

も通り注文をしてくださったのです。山小屋のようなところで作っ

ているという興味も加わったのだと思います。しかし、新たに宅配

という作業が加わりましたので、街でやっていた頃より忙しくなり

ました。そして師走を迎えると、年中に注文分を全部作れるだろう

かと心配になるくらいでした。


             


 苦肉の策で、私はあるアイデアを思いつきました。それは、常連

のお客さんをクリスマスイヴに呼ぶということでした。


             


 「はるばるこんな田舎迄大変ご足労をおかけするのですが、山小

屋の見物かたがた、靴を取りに来てはもらえませんでしょうか?

近くには温泉宿もありますが、なにぶんにも個室ならたくさんあり

ます。そこに粗末ではありますが、泊まれる設備と、共同ですが、

個室のバスルームが3つあります。リビングには暖炉もあり、パチ

パチと燃える薪を見ながら、クリスマスイヴを楽しんで頂けるかと

勝手ですが、そんなご招待でございます」と、ずうずうしくもお

願いと提案をしてみました。


             


 すると驚くことに、案内した10人中、なんと5人がクリスマス

イヴに新年の靴を取りに来られることになったのです。車で約2時間

の距離です。提案した私が一番驚きました。私の作る靴はほぼすべて

ビジネスシューズですから、常連さんは会社の社長さんやら重役さん

やら、そんな偉い方ばかりです。暇なわけはありません。そんなわけ

で、改めて、クリスマスイヴに2時間かけて靴を取りに来きてくださ

る理由を考えてみました。


             


 この田舎の牧師館の家と、どんなところで靴を作っているのか、

単純に興味からだろうと思いました。ですから、そんなありがたい

ごひいきのお客さんのために着々と準備をしました。


             


 念願叶ってホワイトクリスマスになりました。辺り一面の銀世界、

家の周りが真っ白い雪に包まれるなんて、初めての経験です。そし

て、なんと、こんな雪の日に、お昼前からお客さんが次々にやって

来られるではありませんか!私はうれしくて、うれしくて、まるで

親友に会うような気分でお迎えしました。当然ですが、5名のお客

さんはみんな顔見知りではありません。なのに、まるで知人か友人

のようにすぐに打ち解けて、日が暮れる前に暖炉の前で宴会は盛り

上がってしまいました。そこで交わされる会話はどんな会話だろう

と想像するでしょうか?靴の話ではないことは確かです。


             


 宴たけなわとなり、ひとり、ふたりと、あてがわれた部屋に行く

ころ、ようやく、夜のとばりが降りました。外は深々と雪が降り続

けていました。私と息子は宴会の後片付けを終えると、風呂に入り

それぞれの寝室に行きました。そして、窓から見える景色に驚い

たのです。


              


 なんとひとり、ふたりが外に出て、降りしきる雪の中、きゃっ、

きゃっと叫び声を挙げながら雪と戯れているのです。中庭では、

ブランコに揺られているひとりがいました。会社では、責任ある立

場のいい歳をしたオヤジです。まさに、孤独なクリスマスイヴを楽

しんで、いや、堪能しているのだとその時わかったのです。


              


 それ以来、毎年、クリスマスイヴは、見ず知らずのお客さん、

ゲスト5人が集まって私の誕生日を祝ってくれる日になりました。

今では、なんと10倍の競争率です。そして、靴の注文もなんと、

それまでの3倍になりました。山下達郎さんの『クリスマスイヴ』

という、クリスマスイヴをひとりで過ごすことになった寂しい男の

歌がありました。しかし、わたしんとこでは、選ばれし紳士が1年

のうちで1日だけ“孤独を堪能できるイヴ”になっています。お金で

は買えないのです。抽選に当たらなければならないのですから



             


 あっ、ちょっと待って、今、ノックの音がしました。真夜中です。

全くいやなこっちゃ!90歳になっただなんて!




   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 90歳、100歳の元気な方のなんと多いことでしょう!

中には敢えて一人暮らしを続けるかたもいらっしゃいます。

92歳の現役椅子張り職人さんがモデルです。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2025年12月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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