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リサコラム
連載503回
      本日のオードブル

来のわたし
一番
きなかたち

第6話

「My Office」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


自分の肌が
濃いことを実は
欠点に感じていました。
しかし自分に備わったもので
利用できるのであるのならば、
そこに優劣などあるわけがない。
欠点も美点も目立たせるには
そこにオリジナルティが
あるかどうか
そこが
問題だった
のです。
浅黒い肌との
コントラストを利用して
白いスーツにピンクのネクタイ、
そしてこんなブルーグリーンの
濃い色の壁の前に建つと、
私もまんざらではなく
見えませんか?

 
      
  





       

第5話 「My Office」


プラチナに白を混ぜたような色のセダンは黄土色のモロッコ風の石の門からゆっ

くり入ると、白く、黄色くジャスミンが咲き誇る庭のまわりを優雅な曲線で一周し

て、車寄せに止まった。すぐにホテルのドアマンが後部座席を開けた。


             


 「おかえりなさいませ、様」「ああ、ただいま。残念ながら今日はランチだけ

でとんぼ返りになってしまったよ。ちょっと、南アフリカまで寄り道していたもの

で」と真っ白い手袋に向って氏は真っ白い歯を見せた。


 ドアマンは承知しておりますと言いたげに「お疲れのところ、わざわざお立ち寄

りくださり、うれしく存じます」と言った。氏はうんうんと頭を数回降ると傍目

にも上機嫌が見て取れるにこやかな笑顔で立ち上がった。


 玄関の手前まで来て待っていたバトラーは「お帰りなさいませ。お部屋はいつも

通りに準備ができておりますので、お食事はすぐにでもお持ちできます」と笑顔を

見せた。


             


 氏は小さく結んだダークピンクのネクタイを軽く整えると「ありがとう」と言

いながら、鍵を受け取り、白いジャケットを手に持って急ぎ足でエントランスホー

ルから奥に向って進んだ。途中、カウンターや廊下に立っているベルボーイやスタ

ッフはそれぞれに「こんにちは」と親しげな挨拶をした。氏は軽く手を挙げなが

ら大股でひとり先を急いだ。


             


 あらゆるものを二つずつ作り出している磨き込まれた床に氏の力強い足音が響

き、それは高いドーム型の天井に反響した。ホールは外の熱気を追い出してひんや

りと心地よく、それにそこら中に漂っているジャスミンのすうっとした静かな香り

が空気にさらに清涼感を加えている。


 氏は白く光る麻のジャケットを羽織るとエレベーターホールの方に曲がった。

エレベーターが「リン」と澄んだ音色ですぐにやって来ることを告げると氏は鞄

からタブレット端末を引っ張り出した。


             


 「ああ、ロビン、昨日はありがとう。うん、彼のオフィスに行って来たよ」

氏はタブレットに向かって話しかけた。


  「そうですか!あの足で、でしょうか?」「その通り。ちょっと寄り道だった

けど5時間の快眠も得られたし、気分は最高だよ。空港のターミナルホールから別

の空港のターミナルホールまでの旅も目的があればいいものだね」「そうですか。

さすがにさんの韋駄天ぶりには参ります」画面の向こうではロビンと呼ばれたス

キンヘッドのコンサルタントの笑顔が大写しになった。


 「韋駄天なんて。実にゆっくり用を足して、用もなしに帰って来たからね、はは

ははは」「はははは、そうですか。そのご様子ですと何かあったって感じですね」

コンサルタントは興味津々という顔をした。


             


 氏はすぐに胸ポケットに刺さった緑の葉を画面に向けた。「香りまでは届けら

れないかな?彼のオフィスから出るとき、彼がポケットに刺してくれたんだよ。

ミントの葉らしいね。それも特別に上品な香りのするミントで彼が住んでいるアパ

ートの共同の庭を借りて栽培しているミントらしいよ」


 「う~ん、すばらしい香りですね~」コンサルタントは目をつぶって鼻を画面に

さらに近づけたので、彼の顔はさらに大写しになった。「ロビン、はっははは、そ

うか。最近では香りも伝わるんだっけね。テクノロジーの進化はめざましいね」

「それで、何かお話しをなさったのですか?」コンサルタントは浅黒い顔の中の大

きなぶどうの粒のような潤んだ目をして、氏の言葉を待った。


 「君の言った通りだったよ。まさに『モーツアルトが交響曲を作曲したような』

心地よさだったね。一分の隙もなく完璧に美しく、実に清潔なオフィスだったよ。

今までで最高の体験だったね」氏は思い出しながら表現できない言葉を溜息に変

えた。


             


 「リン」やっとエレベーターが迎えに来た合図をすると氏は他に乗るゲストが

いないことを確認してからすっと乗り込んだ。「彼は満面の笑顔で、「私のオフィ

スへ、ようこそ!」と私に言ったよ!もちろん、他のゲストにもひとりひとりね。

そして帰りにさっきのミントの葉を胸ポケットに刺してくれたってわけだよ。なか

なかの機転だね。そもそも、自分の仕事に対する向き合い方がすばらしいと実感し

たよ」画面には氏の専属のコンサルントの満足げな顔が映っていた。


             


 「彼のおかげで初めてヨハネスブルグに足を踏み入れたしね、まあ、空港のター

ミナルだけだけどね。もちろん南アフリカに行ったのもこれが最初だけど、そんな

面白い経験だけで終わらせるつもりだったんだけど、つい、私のオフィスもなか

なかのものだから、こちらに来てみないかと言ってしまったよ」氏は満足げに微

笑むと続けた。「そしたら彼は、『私の後任を探す手伝いをして下さるなら』と言

ったんだよ。だから私は即、約束してきたよ。『必ず、後任を探す』とね。すると

彼は堂々と、『私のオフィスにやってくるゲストをがっかりさせたくないし、自信

を持って後を任せられる人間をお願いします。そうでないとこの私のオフィスを離

れるわけにはいかないのです』胸を張ったんだよ。面白い人間だね。しかも目の付

け所がいいよね。みんな彼のオフィスに入れば、たとえ、南アフリカの大使であろ

うと同じ人間になるんだからね~。これからわが社の会議でこの話をすることにし

たよ。地味な仕事の成果をだれも認めてくれないと向上心を失くしたボヤキ顔の面

々に見せてやろうと思って、実は、彼のピカピカのすばらしい男子トイレ、いや、

失礼、彼のオフィスを隅々まで撮影して来たよ。しかし、実に愉快だね。自分の持

ち場のトイレを『私のオフィス』と呼ぶんだから。“Welcome to my office!”

なんて言われて用を足しに行く気分は、いや~今まで味わったことがなかったよ。

最高に愉快だったね~」M氏がそう言い終えた後、間もなく「リン」と今度はエレ

ベーターが到着を知らせた。


             


 その音に気付いたコンサルタントは、「彼はすばらしい人間力の持ち主ですね。

私の話だけであなたに8時間のフライトをさせるのですから。その空港の男子トイ

レに行くためだけにね」と言うと、会話を終えようとして、「それでは幸運を祈り

ます」と付け加えた。




p.s.1

      私の大好きなカナダ人の著名な作家でコンサルタントのロビン・シャーマの
   YouTubeを聞いてましたら、南アフリカ共和国のヨハネスブルグの空港の
   男子トイレを掃除する男性の話が語られていました。

    彼は、トイレの入り口で、”Welcom to my office!”と言い、自分のオフィスに
   やって来る人をゲストと呼ぶそうです。

    そしてそのトイレの美しさを、ロビンは「モーツアルトが作曲するように」と
   言っていたのです。
     職業や人間の平等を唱える以前に、今の自分に与えられた仕事にほんとうに
   真剣に取り組んでいるのか、その取り組み方は最高レベルなのかを問いかける
   一撃になると感じました。
    学歴も、お金もないその黒人の男性はすでに、世界中の多くの職業人の
   リーダーになってこうしてきっといろんな国で語られていることでしょう。 
    
     私はその男子トイレに入ることができませんので、
   想像をたくましくて、架空の物語をでっち上げました。



           


 上のイラストから、リサコラムの部屋に入れます。
 もの、こと、ほんはこちらから。


              


p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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