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リサコラム
本日のオードブル
第14回

イヴの夜は、大根を
かかえて、アヴェ・マリア


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
趣味は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン
    
      ここ、10年、イヴの夜は、このパターン
                            

 





イヴの夜は大根を抱えて、アヴェ・マリア



 「奇跡だよね。シューベルトはここ、このあたり奇跡だと思わない?

自分のオフィスでシューベルトのアヴェ・マリアを聞くジョシュは、アメリカ大統領

の側近、次席補佐官。「向こうの部屋でチリを食べましょ。みんな待ってるわ

よ」呼びに来た背の高い女性は片手にビールグラスを抱え、いつもとは違うリ

ラックスした雰囲気の報道官C.Jクレッグ。「今朝から、ずっと口ずさんでいる

んだ、この曲を」と告白するジョシュ・ライマン。


 彼は今朝、国家安全保障局から、核攻撃の際のパスをもらいます。万一、

核攻撃などの緊急事態に陥ったとき、そのカードを持っている数人のキーパー

ソンが、地下のコマンドセンターか、大統領専用機に逃げることができるというも

の。そして、その
パスは、秘書のドナはもちろんのこと、自分以外の同僚、広

報部部長のトビーも次長のサムもそして今、目の前にいる報道官CJもその中

に含まれないことを知ると、愕然として悩みます。そして久しぶりに突然、心理

カウンセラーのもとを訪れます。 


 「今朝からずっとアヴェ・マリアを口ずさんでいるんです」そして、今まで自分

自身すら記憶の外にあった、幼児期の消せない苦い記憶を思い出してしまう

ことになります。それは、姉を火事で失ったこと、そして自分だけはベビーシッタ

ーと逃げて助かったこと。「そのとき、ベビーシッターと一緒にポップコーンを焼

いていたんだ
.」「君は小さかったんだ。逃げて当然だよ。」穏やかにさとすよ

うに話すカウンセラーは、無意識にアヴェ・マリアを口ずさんでしまう、ジョシュ

の深層心理を見抜きます。


 アヴェ・マリアはイギリスの詩人ウォルター・スコットの「湖上の美人」の詩に、

シューベルトが曲をつけた歌曲です。父の罪の許しを、聖母マリア像の前で願

う娘の歌なのです。ジョシュは、ベビーシッターに抱かれ、姉を残して、炎の中

から逃げたことに対するを罪悪感に苦しんでた自分に気づきます。核攻撃の

際は、大統領専用機に乗れるパスを持っている自分と、パスがないために、乗

れない、親友で同僚のサム・シーボン、部長のトビー・ジーグラー、C.J.クレッグ

秘書、たくさんの同僚、友人。ジョシュの中には、助けられる自分と、置き去り

にされる親友の姿がその1枚のカードから自分の苦い過去を思い出し、苦しむ

のです。



 アヴェ・マリアが静かに流れつづける室内で、「それで一日悩んでいたの?

あなたって、時々優しいのね」と報道官のCJクレッグ。そしてその内輪の軽い

パーティの晩、ジョシュは、「このパスをもっていたら同僚と顔を合わせられない

し、自分は、うれしいときはみんなと一緒に喜びたいし、つらいとき、悲しいとき

は彼らと一緒にいたい」と、レンタルビデオのカードの隣から例のパスを抜いて

大統領に返します。
ローリーの寝室“のコラムでお話した事のある、”ザ・ホワ

イトハウス“の一場面です。私が好きなものの1つです。


 アメリカでは、現職の大統領が選挙に敗れて、新大統領に代わるとすべての

職員も入れ替わります。アメリカの中枢を担う彼らの仕事は、そのくらいの強い

信頼関係がなくては成り立たないという意味だと思います。ドラマの中でも、多

くのスタッフは、選挙運動中から一緒に予備選を戦ってきたスタッフです。大

統領の右腕と言われる補佐官は、40年来の友人、最初の大統領秘書、ラン

ディハムさんは、大統領が子供だったころから、彼の父の秘書だった人。次席

補佐官ジョシュと広報部次長のサムは親友だし、もちろん、報道官CJクレッ

グと広報部部長のトビーも古い友人。親友レベルの固い絆がなければ、大統

領の下では働けないという証です。しかしこれはどんな仕事にでも言えることか

もしれません。大きな組織も結局は、細胞のような小さい組織の寄せ集まりで

全体を形作っているようなものだから、スタッフ同士が自分の仕事以外は無関

心だったり、足を引っ張り合ったりと、人間関係で問題を抱えていたら、いい仕

事はできないし、致命的な失敗を犯す危険性もあります。そんな目でザ・ホワ

イトハウスを見ていると、血族関係を超えた親密さで、昼夜、休日問わず、働く

真摯な姿に胸を打たれます。また、”信頼関係“と簡単に口にするチームワー

クとは、本当はどんなものなのかを学ぶことができます。
                              


 そして私たちにもホワイトハウスのスタッフに負けないチームがあります。

自分が休みの日でもお店のスタッフと連絡を取り合ったり、具合が悪いそうだと

休みを返上して、快く休みを交替する同僚。子供が小さいために短時間しか

働けないスタッフは、自宅で手がきPOP作製などの内職をして持ってきます。

そして、もちろん、内部のスタッフだけではなく、日曜、祭日だろうと、数時間で

仕上げてくれる人のいい補正屋さんや、フットワークも軽い内装業のフリーラン

スの方、家具職人さん、年中無休の腕のいい椅子張り職人さんなどのスペシ

ャリスト。もちろん、私の出す無理難題に一生懸命答えてくれるクリエイティブ

集団の工場のスタッフがいます。オーダーの羽毛ふとんを約半日で作り上げ

ます。お客様の予定次第で急な変更もあれば、時々犯してはいけないけど、

ミスもあります。だからそんな協力者は欠かせない存在です。


 また、私たちが、お住まいの地名をつけて、”長丘のお母さん”と呼んでいる

ご夫婦は、趣味で本格的な菜園をやっておられます。そのご夫婦は、もう買え

るものは残っていないくらい、マダム・ワトソンで買っておられると思えるのです

が、毎月何度も、どっさり、プレゼントを買って帰られます。それとともに無農薬

の野菜をまた、どっさり、頂きます。せめてものお返しにとクリスマスプレゼントを

持っていくと、 家中の自家製お漬物や、お菓子や、晩ご飯にしなさいと、炊き

立てのご飯のおにぎりを、そして70cmはあるような大根を頂くことになってし

まいます。それで結局、毎年、毎年、クリスマスは、立派な大きな大根を背負

って帰る事になるのです。 そんな近親者以上に心配してくれるお客さまのこ

とを思いながら、イヴの夜はここ10年、大根をかかえて帰ります。


                                       

                





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また、来週の金曜日にお会いしましょう。
                      

木村里紗子 Risaco

 

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