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リサコラム
本日のオードブル
第16回

汝、すべることなかれ



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンに1990年より勤務し、400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)がある。
趣味は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まること。
15年来のベジタリアン。ただしチーズとシャンパンは大好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。好きな作家は、夏目漱石、檀ふみ、中谷彰宏、F.サガン
        
    「汝、バナナの皮ですべることなかれ......」

      「ならば、汝、なぜ拾わない?」

 


汝、すべることなかれ

 新年早々、しかも受験シーズンにそんな不謹慎なタイトルはないでしょ、

とお思いでしょう。
だから今日は、すべらないための、お話です。



 「散りすぎた花のごとく、衰退の一途にあれど、.一つ一つ地道に善を行い

なさい。
いつの日か、きっと明るく、幸せな日がやってくることでしょう。」


 毎年、初売りの元日か、2日の夜、仕事帰りにスタッフみんなで、近くの高宮

八幡宮に参拝に行きます。参拝というより、おみくじを引きに行くようなものとい

ったほうがいいかもしれません。これが一年のうちで一番楽しい行事で、16年

も続けています。さきほどの名文句は、今年の私のおみくじの運勢に書いてあ

ったもの。でも、いくらなんでも「“散りすぎた花、衰退の一途”はないでしょぉ」。

墳墓の跡のような小高い丘の頂上にその小さい八幡宮は、ひっそりと立ってい

ます。池のほとりから、ちょうちんの明かりをたよりに急な石段が50段ほど続き

ます。その石段を、お正月だけの特別衣装、和服を着て、髪飾りをつけた私は

すべる足元を歩きなれないぞうりで1歩1歩、踏みしめながらも、「雨ニモマケ

ズ、風ニモマケズ...」先をゆく、K君に向かって「北に疲れた若者いれば、

行ってその背中を押し..」後から登って来る店長に「南に疲れた店長あれば

行って、そのかばんを負い..」[ほめられもせず、苦にもされず..みんなにデ

クノボウと呼ばれ..」と大きな声で唱えながら登ったにもかかわらず、“衰退の

一途”“散りすぎた花”なの?と愕然として、そして「もう一回引いてもいいでしょ

うか?」とその辺にいるスタッフに聞いたのですが、「そんなことはしないもので

す」。と冷たく、店長。「私は、凶が出たことがあるから、引かないのです」。と意

志の強いK君。仕方なしに、いつのことなのかわからない、“いつの日か、明るく

幸せな日がやってくる”に賭けた私は、枝の中ぐらいにそのおみくじを結び、雨

で濡れた足元の悪い急な階段をみんなに取り残されながら、恐る恐る、慣れ

ないぞうりで手すりを頼りに降りました。


 何せ、衰退の一途を宣告されたあとですから、こんなところで、晴れ着を着

て、階段から滑り落ちて骨折でもしたら、神様の思うツボです。
散りすぎた花の

わたしは先日、大学病院の婦長さんで、顧客の方から、「キムラサン、若く見

えても、体は確実に年取っているのよ。」と打ちのめされ後です。昨日は、9歳

の甥と、トランプの神経衰弱をして完敗したし、記憶力も、もちろん体力も落ち

ているのは事実です。信じたくなくても、これは、もう、徳を積み重ね、明るい幸

せな日がやってくるのを待ちますと、決心しました。
                         


 そして私は、いつも持ち出す”ザ・ホワイトハウス“の1シーンを思い出していま

した。大統領に呼ばれた神父が深夜、大統領執務室にやってくるところから始

ります。


 その神父は、大統領の子供時代に教区の神父だった人です。今日一日、

いろんな人間の意見を聞きながら、結局、死刑執行の取り消しを留保したとい

う大統領に向かって、その神父はこう言います。「君を見ていると、”川のそば

に住んでいた男“のことを思いだすよ」。そしてこんなたとえ話を始めます。


 「町が洪水であふれ、無線で避難するように呼びかけても応じなかった男が

いた。助けようとボートに乗ってやってきた救助隊がメガホンで叫んだ。

 『君、そこの君、早くボートに乗るんだ』男は、怒って怒鳴り返した。『私は信

心深い。祈っていればきっと神様が助けてくれる』そう言って助けを拒んだ。

そして水位は増し、ヘリコプターがやってきて、『そこの、君、早くハシゴにつか

まるんだ。溺れ死ぬぞ』男は、又怒鳴り返した。『私は神を信じている。祈っ

ていればきっと神様が助けてくれる』そして男はとうとう溺れ死んだ。天国の門

前で、その男は神に面会を求めた。『私は、あなたを信じていました。祈りを捧

げました。あなたに愛されていると思っていました』すると神は、男にこう言っ

た。『私は、君に、無線とヘリとメガホンとボートを差し向けた。それなのに、  

なぜ君はこにいるのか?』」
                                    


 話し終わると、沈黙の大統領が深いため息をつき、ほぼ同時に執務室に入

ってきたのは、報道官のCJクレッグ。そして0時0分に、薬物による死刑執行

が行われ、被告人が死亡したことを伝えます。                  


 会話を暗記しているくらいだから、もう50回は見ているかもしれません。何度

見ても、感動的なシーンです。私たちは、知らず知らずのうちに多くの人から与

えられた重要な啓示を見落としているのではないかという、警告です。そのシ

ーンを思い出して、私は、そのおみくじの運勢も重要な啓示ととらえることにし

ました。「川のそばに住んでいた男の話」は、たとえ、信じたくないことでも、耳の

痛い話でも、反対意見でも率直にも耳を傾け、真摯に受け止めなさいという教

えだと思います。リサコラムに感想をお寄せくださいと先週のコラムに書いたら、

6名の方から感想を頂きました。お客様から頂く、ご意見、ご要望、クレーム、

進言も、たくさんあります。また、言外の意味も汲み取らなければなりません。

クレームには、実は真のクレームがオブラートで包み隠されていることを知らな

ければなりません。私や私たちに敢えて苦言を呈してこられる方がいらしたら、

その方は真の支持者だと思っています。新年に向けて、たくさんの目標や抱負

が語られる2007年、このとき、私も同じように今年の抱負を語るならば、「よく

見聞きし、そして忘れず」「誰もが嫌がる仕事をあえてする」です。


 私のプロフィールに400名以上の顧客を持つカリスマ販売員と書いてありま

す。1000名のお客様の名前と趣味趣向がわかるといばっても、1001人目の

お客さまの名前と趣味趣向を覚える努力をしなかったら、カリスマどころか、販

売員として失格です。だから、毎日努力を積みかさねるしかありません。そして

散りすぎた花の私は、毎月、自宅でトランプの会を開くことに決めました。1年

間、記憶力を鍛えて、来年は10歳の甥に神経衰弱で勝つことを目標にいたし

します。



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 お名前と、お差し支えなければ、ご住所も書き添えてくださいね。ご返事いたします。


また、来週の金曜日、お会いしましょう。                      
                      

木村里紗子 Risaco

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