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リサコラム
連載344回
      本日のオードブル




第2回


ラ・ビ・アン・ローズ


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)は
2012年12月で6刷)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト
、クリス・岡崎、他たくさん。


石畳みの道はハーバー沿いのカラフルな倉庫街まで
続いています。

街灯は3連のクラシックな趣きで、その下で若い人たちは
楽しげに歩いたり、走ったり、街燈の下で本を読んだり
本を読んでいる人に気を取られたり、
でもみんなきれいな色の服を着て幸せな顔をして、
田舎暮らしを楽しんでいるようです。

それに、おいしそうな匂いのする
かわいいフレンチレストラン!

あれ?ネズミ色のスーツを着て、
茶色のスーツケースに黒い靴を履いている
ちぐはぐはな人、ひとり。
だあれ?この田舎者は。


 
      
  





 


ラ・ビ・アン・ローズ

                      



 まさかね。驚嘆の日常は「にいつ」ならぬ、「ニース」駅に降り立った時に始ま

った。電車でおフランスのニースにたどり着けるわけはないけど、ここはほんとの

ニース。ニースという名前の村なのだから。


 美しいミス・ニースは長い髪をさらりなびかせ、すっと手を出した。えっ?あり

えない。こんな美人が不美人な私に握手?なんで?しかし、握手の後、美女はペン

ダントの先に光るものを口にはさんで、「ぴ~」とけたたましい音を鳴らしたでは

ないの!



               



 「何?私、何もしてない 握手だけよぉ」どこに逃げればいいの?とっさにあた

ふたして逃げた。でも足踏みしているだけだった。握手したら、その○○ハラとか

そんな新種の犯罪なの~?そんな、ひどい!私から握手したわけじゃあないのよ~

「ここはどこ? 私どうなる? にいつでよかったのに」この際にこんなバカな川

柳を口にするなんてと思った矢先、駅員、売店のおばちゃん、通りを歩いている人

たち、すべての人々は立ち止まり「拍手」をした。この私に!


 それからミス・ニースは私にスミレのような小さな花束と大きなアマ玉のような

ものを手渡した。「Tシャツのプレゼントです。おめでとうございます。今日から

あなたもマドモワゼル・ニースです」「私、何かしました?その何番目とかの記念

の?」「いえ、これは私たちのコティディエンなんです」「は・?コティデ

「はい。コティディエン、つまり、日常と言う意味です」「日常?」「ええ。ニー

スではいつも新しい方をお迎えするとこのように拍手で歓迎するのです。スミレと

Tシャツもプレゼントしてます」「はあ~」私は想像外の歓迎を受け、駅の階段を

数段降りながらスタンディング・オベイションを受けた。



              



 「私 いっしゅん有名人 心当たりはないけれど」もちろん私の人生でこんなこ

とは最初で最後。ならばと、私はこんな時に不思議と堂々となれるものなのか、驚

きだが一段一段をゆっくり降り始めた。ああ、先の3段をもっとゆっくり降りれば

よかったと後悔先に立たず。でも今さら恥ずかしくてさすがに後戻りはできない。

その時、「一瞬、一瞬を大事に生きることが人間一番大事だ」と言ったメンターの

言葉を初めて実感していた。けれど一抹の不安もあった。


 「あのどっきりカメラとかじゃない、デスカ?」私はぎこちない日本語で階段の

下にいる男性に尋ねた。「いえ、ここでは普通です」「そう、普通なんですね

「これからどこへ?」「あの、下宿に..」「それじゃご案内しましょうか?」「い

や、そんな、そんな、結構です。歩きで5分らしいので」ありえない。そんなべ

っとりした人間の付合い方に慣れていない私は当然まごついた。



             



 「すぐそこですよ」「ええ、すぐそこ、でも、どうしてご存じ?」「もちろんで

す」「はあ~、これも、コメディエンね」「いや、コティディエンです」「ああ、

コテディエン?」「いえ、コティディエンです」私は真っ赤になった顔を隠すよう

に、「ありがとうございます。そのうちきっと言えるようになります」と逃げるよ

うに駅前の道を小走りに走った。まだ数人は私に拍手を送っている。


 私の方が変なのか、それともこのあたりの人が変なのか?とにかく落ち着いて、

息を切らし、でも地番を確かめながら、駅前の道をまっすぐに港まで行った。どう

やら目的地らしかったが、下宿のようなものは見当たらない。ここはそのコティデ

ィなんとかの風習に従って、聞いてみるしかなかった。



             



 私は若い男女二人を見つけると、下宿の番地を言った。「ああ、La Vie en Rose

ですね。きっと」「ラヴィエンローズ?」「ええ、ラ・ビ・アン・ローズです」と

ピンクのジップアップを来た今風のかわいい田舎娘はカタカタ風に言い換えた。そ

の指さした先には、確かにそんな看板のレストランがあるではないの!「きっとこ

こだと思いますよ」「そうかな~?私、下宿するんですけど」私はピンクとブル

ーで壁を塗り分けたフレンチレストランの前で立ち止まった。



             



 「あの、鈴木カナコさんですよね?」私の目の前には、ブルーの帽子をかぶり、

モスグリーンの長いエプロンをかけたボーイさんが立っていた。「目元涼しく な

んと イケメン」「はい」「ああ、やっぱり。お待ちしておりました。長旅お疲れ

さまでした。カナコさんのお部屋はここの2階です。すでにお荷物は上げておきま

した。12畳の寝室だけの狭いお部屋ですが、シャワーブースはあります。お風呂

は最近できたホテルのスパを何度でも無料で使って頂けます。それに、お食事は1

階のフレンチでお願いできますか?営業時間は朝6時から夜12時までです」


 えっ?何?共同炊事場の、風呂は共同浴場で?2階を見上げれば、ジュリエット

が「OH!ロミオ」と言いながら身を乗り出しそうな、ゼラニウムの咲く素敵な白

いバルコニーの、ここがその下宿!?



              



 「お食事まだなら、よろしければ先にどうぞ。下宿代に3食インクルードです。

「あの、込ってことですか?」「ええ。ああ、申し遅れました。私、ラ・ビ・アン

・ローズのバトラーの、ケンです。どうぞよろしく」「ああ、よろしく。ラ・ビ・

アン・ローズ、バラ色の人生・・?」



             



 私は目からハートが出てはいないか不安と恥ずかしさでいっぱいになって、目を

伏せたまま、今日2度目の握手をした。


 「左遷はつらいよ と うれし涙」心の中で私は小さくツイートした。




     





   *p.s. 「わたしの部屋も このくらい細かく書いてくれるよね Risacoさん」



   *イラストもストーリーも実在の物とは関係ありません。

   *上のイラストから「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

    毎週火曜日更新連載です。

   * 「リサコラム」は毎週月曜日連載です。



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。



    




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

(Amazon、書店では1,500円で販売しています。)

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,800円にてお届けいたします。  
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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