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リサコラム
連載346回
      本日のオードブル




第4回


ラ・ヴィ・アン・ブルー・カフェ
La Vie en Bleu Cafe

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)は
2012年12月で6刷)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト
、クリス・岡崎、他たくさん。


吟遊詩人はバンダナをひるがえして、
バイオリンを弾く。
若いカップルの女性は目を閉じて聴き入り、
男性は外を眺め悦にいる。
黄色いジャケットの男性は、優雅に体をひねって
吟遊詩人の方を眺める。

大量のグラスの入るガラス棚の手前に
男性バーテンダー3人。

私は一人丸い特等席で楽しむ。

「ニースの夕べは
夜でもなく、昼でもなく、ずっと4時であってくれてもいいのよ。ああ ニース 私以外に左遷はさせないわ うふふ」


 
      
  





 

ラ・ヴィ・アン・ブルー・カフェ

La Vie en Bleu Cafe






       




 4時だからってわけじゃあないよね?私はカフェの入り口あたりに立って、自分

の居場所を失っていた。

 朝寝坊どころか昼まで寝過ごして職場に大遅刻したある日から、朝か夕方か寝ぼ

けまなこではすぐに判別できない“4時”という時間が来ると、私は精神的に不安

定になる。


 村の習慣なのか条例なのかわからないけど、ダサイと言われようと多少の自覚は

あるからしかたないけど、ニース対私と言えば、向こうはカラフルおしゃれでフレ

ンドリーな村人たち、私は寝起き同然くらいの違いはある。

 「ここ午後4時の カフェで緊張する わたし」だった。


              


 カフェにいる人たちは手に持ったグラスを差し出すようにして、明るく挨拶をす

ると何事もなかったようにまた自分たちに戻っていた。もちろん、今まで知ってい

たはずの人間関係とはまるで違う。何?この明るさは?このパワフルなごみ感は?


              


 ケンは、「それではごゆっくり」というとくるりと後ろを向いた。「いや~、ち

ょっと待って!」私は腕をつかんだ。ケンだけが唯一、得体の知れないニース村の

案内人。そう簡単に手放すわけにはゆかない。「あの、どうしたらいいですか?」

「どうぞゆっくり」「いえ、あの、ダサイと捕まるわけじゃないんですよね」「も

ちろんです。ここには、“センスある監視委員会”がありまして、その独特のシス

テムなんです」「へ~、そうなの~?」「そのうちお分かりになられるでしょう」

本物のSFみたいな村に私は迷い込んだのだろうか?「そのうちで間に合うんです

ね」「ええ。それではディナーは午後6時半からです」と言うとケンは行ってしま

った。


           


 「I LOVE NICE(ニース)」と書かれたトートバックを手に握ったま

ま踏み出せない私。でも遠巻きに見守っていたボーイはすぐにやってきて、奥に案

内してくれた。


             


 丸いテーブルで女性と飲んでいるがっちりした体格の黒人男性がいる。ふ~ん、

イケメン!「彼もニースの人ですか?」「はい。彼はここの専属ピアニストです。

後でゆっくり演奏をお楽しみ頂けます」「もしかして、鍵盤の帝王、オスカー・ピ

ーターソン風にも弾けるのかしら?」「ええ、もちろんです」


 私はその時、私の左遷を心ひそかに憐れんだ同僚のユミとエミコのことを思い出

した。壁に手書きの貼り紙のお品書きを見ながら、焼き鳥2つに、砂ずり3つ、生

ビール1つ大ジョッキでなんて注文する私を想像していたのに、黒人のイケメンピ

アニストの歌うバーで、オスカー・ピーターソンも聴けるっていうのよ~!


            


 ボーイはすぐに丸い円形の大きなビーズクッションのようなシートに案内した。

「カナコさま、ニースに、そして『La Vie en Blue Cafeにようこそ!』」カウン

ターのむこうの別のボーイはちらっと頭を傾けながら言った。


 「すごい! 私やっぱり 有名人?」

 「どうぞお靴を脱いでリラックスなさって下さいませ」

 「えっ?ここぉ?」私は靴を脱いでいきなり座る勇気はなかった。

 「特等席です。いつもは予約席なんですよ。今晩は、カナコさまのためにケンが

予約しておりましたので。それにしばらくすると、ギンユウシジンもまいりますか

ら」「ギンユウシジンってその吟遊詩人?」若いボーイは「さあ、どうぞ」と私を

促した。そして「本日のスペシャリテは『さくらんぼカクテル』です。数種類ござ

います」とメニューを見せた。


               


 私はそのメニューを見てまた仰天した。なに、このカクテルの多さ!「その、さ

くらんぼカクテルってどれですか?」「あの左ページ全部です」「1ページ全部?

」「はい、何ならお読みします」彼は5,60あるさくらんぼカクテルを順に読み

始めた。「さくらんぼの初恋、さくらんぼ&バニラの2重奏曲、さくらんぼジェリ

ーの夢、さくらんぼかくれんぼ、さくらんさくらんぼ トロピカルさくらんぼ さ

くらんぼ&クリームのシンフォニー、さくらん」「ああ、もう、わかりました。

とりあえず、『さくらんぼかくれんぼ』にしていただけますか?」「はい。かしこ

まりました。それでは、品種をお選びいただけますか?」「さくらんぼの品種?」

「はい。そうです。まず、伊藤錦、加藤錦、近藤錦、武藤錦、権藤錦、新堂錦、」

「あの、その、そんなに品種あるんです?」「はい。20品種ございます」「つま

り、60X20=120種類?」「そうなりますね」「その本日のスペシャリテだ

けで?」「はい。いかがいたしましょう?」「その、それじゃ、私、権藤錦にしよ

うかな?」私は憧れの先輩の名前を言った。しかし、権藤錦の次は伊藤錦、加藤錦

・・・と6杯も飲んでしまった。


             


 それから2時間、吟遊詩人の詩とバイオリンに酔い、遠くでイケメン黒人ピアニ

ストのとろけるような繊細なピアノに身も心も開放的になって、大きなビーズクッ

ションの上で脚を伸ばしてすっかりくつろいでしまった。ああ、「見れば リズム

を刻む 裸足の足」まだお楽しみのフレンチが待っているというのに、もう、こん

なに酔っぱらってしまって「初日から夢み心地の 左遷 サイコウ!」私は吟遊

詩人にグラスを傾けて乾杯をした。


            


 ボーイがお替りを聞きに来た。「もう、たくさん。フレンチが待っているしね」

私は少し、ろれつの回らない口調で言った。「そうですか」「ええ、もう、久しぶ

りに酔ってしまったのよ~♪」
                

 「それはうれしいことでございます。ノン・アルコール・バーで酔ってくだされ

ば、私たちも光栄でございます」


  




     





   *p.s. バーのイラストはよく描きます。バーテンのシェイカーを振る格好が好きなのと
      脚を組んだりしないので簡単だから。一番時間がかかったのは、
      バーカウンターと椅子の位置関係。


   *イラストもストーリーも実在の物とは関係ありません。

   *上のイラストから「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

    毎週火曜日更新連載です。

   * 「リサコラム」は毎週月曜日連載です。



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。



    




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

(Amazon、書店では1,500円で販売しています。)

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,800円にてお届けいたします。  
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

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