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リサコラム
連載349回
      本日のオードブル




第7回


ハートのドア


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書”シンプル&ラグジュアリーに暮らす”(ダイヤモンド社)(06年6月)は
2012年12月で6刷)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト
、クリス・岡崎、他たくさん。



ドアを開ければ、ベランダの先は海。海だけ。
紺碧のニースの海。遠くに小島。
そして、近くは白いテーブルクロスの朝のテーブル。
ニース産オレンジの絞りたてジュースと
アボカド添えのパンケーキ。
ニース産の新鮮朝摘みいちご。
パラソルとゆったりした楕円の籐のソファ。
そして、ナプキンを腕に掛けたボーイさん。
もしかして、わたし、その、あの、億万長者?



 
      
  





 


ハートのドア


 片田舎の村の新居に夜遅くやっとたどり着いた。

 いや、ドアの前にたどり着いた。15分前に。

 なぜか見慣れた大きなハートの看板付きのドアの前に!





         




 そこで途方に暮れながら、芽キャベツで億万長者になったサチ子の話を思い出し

ていた。「人の人生って一日で変わるのよ」サチ子はそう言った。「私、芽キャベ

ツが大嫌いだったのよ。でもね、あるトーク番組で私の好きな男優さんが、芽キャ

ベツが大好きだって言ったのを聞いたときに、嫌いなものが大好きなものに、一挙

大逆転をしたの!それがきっかけで貧乏のどん底から抜け出せて、そして億万長者

になれたのよ」「へ~?貧乏のどん底からぁ~」サチ子の大きな目からはうるんだ

熱波が私に飛び、私はのけぞった。



             



 「大の苦手が大好きなものに変わる瞬間て、あるのよ!人間、複雑に見えて実に

単純よね~」そういうと、りんごのパイを口に運んだ。


 「あリー・ふぉッターって、しっるでしょ。」ほおばった口元からパイのかけら

がとんだ。「は?」ようやく落ちつたところで、サチ子は続けた。「ハリー、『ハ

リー・ポッター』書いた、JK・ローリンズよ。8億ドルの資産を持つ億万長者だ

けど、実はシングルマザーで生活保護を受けていたのよ。書いた原稿を出版社に持

って行っても12社も断られて、最後の13社目に原稿を受け取った編集者は、ま

ず自分の子供に読ませたらしいわ。そしたら、その子が、今までで一番おもしろか

ったって、言ったらしいのよ。それで本になって、今じゃ4億冊の世界ベストセラ

ーだもんね。それ聞くと、ローリンズは運がよかったって思うでしょ。でも、実は

もっと運がよかったのはその出版社よね~。つまり一番運が悪かったのは、その前

に断った12の出版社ってこと。どんなにか歯がゆい思いをしていたはずよ。そん

なチャンスを逃したわけだもんね。つまり、私が言いたいのは物の見方には両面あ

るってこと。だから片側だけから見てたら、真実を見落とすのよ」サチ子は今日レ

ストランで知り合った私に滔々としゃべった。どうしてこんなことをしゃべるのだ

ろという私の疑問には全く気にもしない風で。



             



 「それと、メディアに乗ったきは、もう下り坂だってこともつけ加えておくわ。

だから私の芽キャベツはメディアに乗らないように細心の注意を払っているのよ。

メディアに乗ったらおしまいだもの。だって、そうでしょ。その途端、私の芽キャ

ベツは類似品が一斉に出てくるのよ。「村おこし」なんて言葉も、使い古されて新

鮮さはないから、ここも取材なんて来ないけど、その注目を浴びない田舎加減がい

いのよ。でも、そこでひそかに潜入するみたいに自分のプロジェクトに専心してい

る人たちがたくさんいるのよ。ここはそんな変人の集まった村だと思えばいいわ」


 ハートのアップリケに劣らず、ハートを噴出しているサチ子の燃える瞳を見なが

ら、私は言葉も出なかった。



             



 「だからね、ちょっと変人とか間抜けに見られてぜんぜん、結構なのよ」アップ

リケのハートをちょっと触って、サチ子はにやっとした。


 「カナコさん、見たでしょ?変に田舎離れしたハート付きのビビッドな服の人と

か、靴の色が左右違う人を。実はね、毎週、“ラブラブ・ニース”っていうデザイ

ンのオーディションが村であるのよ。そのオーディションに通ったデザインを村が

買い取って、Tシャツとかバッグとか服にするの。それを持ってたり着たりしてる

と、ショップなんかは必ず何かのお得なサービスをやらなくちゃならないっていう

条例があるのよ」だから村は“ラブラブ・ニース”のハートマークだらけよ。ハー

トマークの服なんてダサイって思っているでしょ?」サチ子は私の顔をじっと覗き

こんだ。「いえ、そんな、す、ス、テキですよ~」私は全然無理をしていないよう

な表情を作ったが、燃えるハートの瞳は見抜いたかもしれない。いや、きっとそう

だ。


 「でもね、一見、ダサく見えるのはセンスを隠し持っている人が使う手段よ。ダ

サイとセンスは紙一重でしょ。前衛芸術だって、ダサイのかどうなのかわからない

の、たくさんあるでしょ。センスの隠れ蓑だと思えばいいのよ。“シャープで研ぎ

澄まされた”っていうほうが実は簡単だと思うわ。でもね、極端な例だけど、りん

ごマークの大企業があるわよね。今じゃ、単なるりんごに込められたメッセージを

みんな読み取ろうとするわよね。きっとすごいセンスなんだなって思うじゃない。

それにそのりんごが生まれたシリコンバレーなんて、ニューヨークなんかから見た

ら、ニース村みたいなところだったしね。つまり、“ラブラブ・ニース”から、そ

んなりんごを生み出すことをニースは狙っているのよ」


 「実はね、その「智」を集めるために、このニース計画は始まったのよ。だから

もし、野心があれば、ここで大成功を収めることもできるのよ」私はドアの前で、

声を押し殺してしゃべったサチ子をずっと思い出していた。


 そのドアにはドアノブがなかったから。押すこともできず、引くことはもちろん

できずにいたから。



             



 もしか?私はやってみた。「ラブラブ・ニース、ラブラブ・ニース」そう2度呟

いて、カードキーを通した。す~とドアと一緒に私の夢も大きく開いた。きっと、

そう夢も。


 そうか!サチ子さんはここのオーナーなんだ!


 「ダサいとセンスは紙一重」ドアのハートがしゃべった。










     





   *p.s. 本日は、合計3時間で絵は完成。ピカソの30分には遥か及ばずですが、
        仕事が詰まっていると早くなるものですね。




   *イラストもストーリーも実在の場所などとは関係ありません。

   *上のイラストから「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

    毎週火曜日更新連載です。

   * 「リサコラム」は毎週月曜日連載です。



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。



    




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

(Amazon、書店では1,500円で販売しています。)

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,800円にてお届けいたします。  
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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