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リサコラム
連載454回
      本日のオードブル

W.T.クラブ

第11話

「来客があって」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。外国語を学ぶこと。
そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


「さあ、どうぞ、こちらへ。
高級リゾートのような、シックなインテリアに
してみたんですよ。
出入り口のカーテンをご覧下さい。
天井から下がるカーテンには、
重厚感のあるホワイトシルクに茶のトリムをつけて
おしゃれをしています。
そして、
マホガニーの天蓋ベッドにも白いシルクの
カーテンを掛けています。
同じシルクでも違うんですよ。
ラズベリー色のベッドスプレッドは手編みです。
特別にこしらえさえました。
壁も床もシックなグレー系で張り替えました。
さあ、いかがでしょうか?」

.
 
      
  





      

第11話「来客があって」



火曜日の午後10時には面白いことがよく起きる。私はクラブの自分の部屋を抜け

出して、クラブのラウンジに来ていた。もちろん抜け出すという表現は正しくない。

単に企画に行き詰っていただけだから。


            


 「ボー・ブランメル風ってなんだね?」私の前に座った中年のスリムな男性はそう

言った。私はそれが私に向けられたものどうかを確認するために、ちょっと周りを見

渡してみた。


 私以外には、話し込んでいる30代後半の男性2人。それも2人共、今日は別々の

言語で話をしている。時には大きな声で笑い合っているから、お互いに理解し合って

話をしているのだろうけれど、2人のしゃべる言葉を私はどちら共、全く理解できな

い。


             


 それと、瞑想にふけっているのか、宙を見詰めている女性がひとり。今日の彼女は

微動だにせず、私がここにやって来た20分程前からずっと同じ姿勢をとり続けてい

る。かといって僧侶のような風貌でも、服装にこだわらない感じでも、さらに過度な

装飾のある服装でもなく、可もなく不可もなくといった感じで、さらにリクルートな

らそれとわかるような服装でもない。目立たず、品もあるグレーを帯びたアイボリー

のスーツにフリルのついたブラウンのシャツを上品に合わせている。それが瞑想中ら

しき表情と妙にそぐわない。


 このクラブの会費もそれ相当な額だし、会員になれるには信頼できる会員の紹介者

がいるし、さらに変わったやり方で入会審査も行われる。そういう意味ではかなりま

ともな人間の集まりともいえる。しかし、もし、世の中には変わった人がどのくらい

いるのか、何も知らない調査員がここでアンケートを取ってみたら、きっと驚くよう

な結果が出て、それを無作為にとったアンケートだと勘違いされたら、大変なことに

なるのは必至だろう。そんな思いを巡らすのに、数秒しかかかりはしなかった。私だ

って、そのまともに変わった人間のひとりなのだから。


              


 しかし、人は人から変わった人間だと言われたいシチュエーションとそうでないシ

チュエーションがある。時に、相手から共感を得たいと思う時、「あなた、変わって

るね」と言われたら、落胆することもある。しかし、大したことではないことに、

「変わってるね」と言われてちょっと注目を得たいときもある。たとえば数人で行っ

たレストランでメニューを選ぶときに変わったものを注文する等の行為だ。しかし、

ひねりすぎて食べられない物が出され、逆に自己嫌悪に陥る時もある。あるいは、思

い切り変わったメニューを選んだつもりが、他の数人と同じメニューを選んでしまう

時もある。つまり、それは変わっている、変わっていないの問題の前に確率の問題な

のだろうか?あるいは、10手先を読んだつもりが元に戻っただけなのか?


              


 またこんなこともよくある。女性をターゲットにしたようなちょっとおしゃれな変

わった車ほど、ちょっと変わった色に人気が集中する。結果、変わった色がふつうの

色になってしまうこともある。


 そして今は、流行っている先端の時間は日に日に短くなり、今では会議が引けたと

たん、みんなが無言で手元コミュニケーションを始めるのは見慣れたごく普通の風景

になってしまっている。以前、男性がみんな一斉にタバコを吸い始めていた状況と似

た状況だと言える。だからと言って流行に流されたくないと言えば、今はITについ

てゆけなくなったことの言い訳と取られることもある。


             


 ファッションの流行はとうにしかり。流される、流されないの、そのせめぎ合いを

どうするか、ジェームス・ディーンも、ウインストン・チァーチルも、白洲次郎も過

去の伊達男の例はすでに出し尽くして、そんな時に私には願ってもない助け舟、いや

これこそ、シンクロニシティなのか、あの男性と私は意気投合できるというのだろう

か?


             


 「ボー・ブランメル風がどうしたんです?」私に振られたはずの質問に私は質問で

答えた。シャンペンでブーツを洗ったという、18世紀の英国伊達男の代名詞を私は

聞き流すわけがない。しかし、彼は私の言葉にぽかんとした反応で返した。


             


 「いや、声が大きかったですね。それは失礼。執事と話をしてまして。男性の来客

があるもので、部屋のインテリアをどうやったか聞いていたんです」彼はりんごの腕

時計を示した。


 「私はインテリアのことはよくわかないんですが、犬がね、ええ、とても賢い犬で

して。インテリアのセンスもあるんですよ。犬に最終判断をさせるんです」


             


 「なるほど、犬にね。“ボー・ブランメル風”インテリアをですか」私はその

時、ピンと来た。


 “嗅覚で感じるファッションは“ボー・ブランメル風”“なんてキャッチはどうだ

ろうか?今さらと言う気もしなくはないが、18世紀を持ち出せば、21世紀において

は新鮮に感じるだろう。私は2か月先に迫った企画のテーマをやっと見つけた。


             


 「私の相棒はね、」男性は頬を緩ませた。「好きなインテリアのベッドルームでは

絶対、ベッドに近寄らないんです。それがOKのしるしです。役に立つ犬ですよ。フ

ァッション雑誌を見せれば、私に似合う服を手で押さえて教えてくれるんです。だか

ら私はそれを注文するだけでいいんです。私にとってはこのクラブ同様、最高の相棒

ですね」


             


 火曜の夜のラウンジは特にいい。なんてたって、火曜はこの変人メンバーたちが集

まる日だから、刺激を受けるネタに付きない。


   


 「私にとっても、ここは最高の相棒です。それでは、私はこれで失礼します。ちょ

っと来客があって」私は意気揚々と、立ち上がった。




   *上のイラスト及び写真から「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

  
   * 「リサコラムの部屋」は10最後に0の付く日の連載です。
      時々変更させて頂きます場合はNEWS欄でご案内致します。

P.S.
 アイデアのヒントをどこで得るのか?これはよく聞かれる質問です。
もしも私が答えるならば、見聞きしたものを潜在意識の中の引き出しに入れて置けば、
何かのきっかけで引出しが開いて、出てくるのだと思います。
その引き出しには、取っ手がついていないので、取っ手は粘着力のあるものでなくてはならず、
それがつまり、ヒントではないかと思うのです。引出しを引く「吸盤」がつまりはヒントですね。
これもきっとヒントですね。吸盤付ですから。

P.S.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」を紙の本で読みたいと
  よく言われます。 いつか紙にできるようにします。
    この本はとても分量が多く、濃厚です。フォアグラのステーキと濃厚なマッシュルームとポテトの
  スープを合わせて頂くような感じです。だから、終わりがけはりんごのシャーベットとミントティもご用意   しています。
     まだお読みでない方はどうか、心してリゾートのフルコースを味わってくださいますように。
  税込千円のフルコースはなかなかのお買い得だと思います。下のどこでもドアから入れます

                      



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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