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リサコラム
連載455回
      本日のオードブル

W.T.クラブ

第12話

「チリエビ方式」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。外国語を学ぶこと。
そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


「カフェ1号店jは
広いウッドデッキのアウトドアラウンジが人気です。

セルフですが、おいしい飲み物と
すばらしいお茶、そしてグルメをうならせる
バイキングのランチ、そしてカクテルタイムが
楽しめます。

発案者4名の好きな
ラベンダー、ハーブグリーン、ピーコックブルー、
ココア色を
電動のロースクリーンの色にしました。

クラブ員がそれぞれ持ち寄るのは
憂いではなく、
アイデアとヒント、
そしてもうひとつ大事なものがあるのです」

.
 
      
  





      

第12話 「チリエビ方式」



 「それなら、光をたっぷり取り入れたいな」 


            


 靴のコレクターであり、鉄道マニアで、写真家、そして本業は不動産業のニックネ

ームFree氏はそう言うと、ラウンジの中央にあるドリンクバーに歩み寄った。そし

てワインのボトルを眺めながらさらに続けた。


            


 「3m50の天井高が欲しいな。海の見える場所が最高だけど、ルーフバルコニー

付きのテナントなら、全面ガラス張りにして、広いウッドデッキにデイベッドを置い

たらどうだろう?」長身のFree氏はバーから、グラスいっぱいの赤ワインと山盛り

のサラダを持って自分の席に戻ってきた。


 すぐに、ココア色のジャケットを着た男性は手を挙げた。いつもココア色のジャケ

ットを着ているために、「番」というその珍しい名前はニックネームで「定番」氏と

呼ばれるようになった。


            


 定番氏はFree氏の皿をちらっと横目で見ると続けて言った。「それなら、エビチ

リもやっぱり、定番メニューにして欲しいね。それに、テーブル席は白いクロスを掛

けたいよね」


            


 「気軽なカフェでも、ま白きテーブルクロスがいるかな?」今を時めくジャズマン

のT氏は立ったままで、さっきから首や肩を軽く回しながらラウンジの中でウォーミ

ングアップ中のようである。


 ジャズマンT氏はさらに、「そもそも、このクラブのカフェを別の場所に作って、

さらにハーフオープンでクラブ員以外にもドアを開けなくちゃいけないんですかね?

クラブ員だけのカフェではどうしてダメなのか、そこがどうも納得ゆかないね」 と

言った。


            


 それを受けて、モデルのS女史はソファから立ち上がると、「それもいいんじゃな

いですか?」と言った。彼女のシフォンプリーツのドレスの裾からはお香のような香

りがぷんと立ち上った。その品(しな)は彼女が歩く後に残り香となって振りまかれ

ている。そして長身でハイヒールを履いたS女史がくるっと方向転換をすると、裾に

ゆくに従ってプリーツが広がるロングドレスの裾からさらに品(ひん)のある香りの

波となってラウンジに広がって行った。こんな注目を集めるしぐさだって彼女にとっ

てはごくふつうのことのようだ。


            


 「どうしてそれがいいんですか?」精神科医師のローズ氏がS女史の方に厳しい目

を向けた。「それに、余った予算の使い道にしてはぜいたくすぎる遊びではありませ

んか?カフェなら、別にこのラウンジでいいのではありませんか?ここだってカフェ

のようなものでしょ?」


            


 その反論をロンググラスにたっぷりのシリアルとアイスクリームを盛り付けながら

聞いていたS女史は黙ったままその上にラズベリーソースをたっぷりかけた後、席に

戻って来るとやっと発言した。


            


 「このラウンジだけではすでに煮詰まって来ている問題もたくさんあるようですし

各委員会で議論している問題を全国に配置したカフェに持ち出してその地域のクラブ

員の間で議論してみたら、意外にいいアイデアが出ることだってあるんじゃないかと

思いますよ」


            


 ローズ氏は、「だったら、なおのこと、クラブ員だけのカフェにすべきだと思いま

すね」と言うと、さらに続けた。「あるいは、そこからリムジンを出してこの本家の

クラブまでの送迎をする拠点にするカフェの案ならいいとは思いますけどね。つまり

孤島のリゾートに小型ジェットで飛ぶ前にその滑走路脇に設置したエアポートラウン

ジ的な使い方ということです


            


 「なるほど、面白いね~、場外馬券場みたいな感じかな?ははは職場に近いと

ころでここの気分が味わえるしね~」 麦わら帽子がトレードマークのMr.百姓と呼

ばれる農学部のM教授はすぐに賛同した。


            


 すると定番氏は「つまり、カフェのチェーン展開みたいなことですか?クラブの出

先機関みたいな感じゃなくて?確かにそれは面白いけど、事が大きくなりすぎて、本

来のカフェの目的から外れはしないかな?」と反論した。


 「でも、クラブ員の紹介であれば、誰だって立ち寄れるカフェならば、多彩で優秀

なクラブ員も集めやすくなりますよ。さらに遠方からわざわざここにやって来ている

クラブ員もおられますから、地元でもここのラウンジの雰囲気を味わってもらうこと

もできるのですから」とS女史はパフェのスプーンを立てて強調のしぐさを示した。


 「そうでしょうか?」精神科医のローズ氏は「遠来のクラブ員はほとんどが出張で

やって来ているわけですから、クラブを利用する目的と意義は少し違いますよ」と、

また少し強い口調で言った。


            


 「しかし、面白くはあるよね。そんなカフェ&プチホテルが全国に増えたら面白く

ないですか?だって、出張先でもここみたいな居場所があるってことでしょ?」とジ

ャズマンT氏が述べた後、Mr.百姓のM氏がおもむろに口を開いた。


 「それでは、チェーン展開するアイデアは先の議論にして、まずはW.T.クラブ

のカフェ1号店の是非につきまして採決を行いたいと思います」と宣言し、ジャズマ

T氏、S女史、ローズ氏、定番氏、Free氏もそろってにこやかな表情を浮かべた。

そして50名あまりのクラブ員の前に並ぶと、クラブ員による劇は喝采を浴びた。


 そんな模擬会議の劇が終わると、クラブ員ひとりひとりがW.T.クラブのカフェ

をつくるかどうかと、もし、作るとすれば、カフェの名前の案についての採決が投票

によって行われた。


             


 投票箱から出された結果は賛成多数でW.T.クラブのカフェ第1号店が出される

ことに決着した。


 さらに、決まったことは、W.T.クラブをもじって、T.W.カフェとなり、エ

ビチリも定番メニューになったことだった。なお、劇による模擬会議&採決の方法は

これ以降、「チリエビ方式」と呼ばれようになった。理由?きっと逆さ言葉が好きな

ジャズマンT氏が付けた洒落だろう。


   


 変わった人間の集まりには変わった議論と採決の仕方、そしてなにより、ユーモア

がある。




   *上のイラスト及び写真から「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。

  
   * 「リサコラムの部屋」は10最後に0の付く日の連載です。
      時々変更させて頂きます場合はNEWS欄でご案内致します。

P.S.1.
    先日、FBSのめんたいワイトの「お宅探偵ホームズ」という20分のTV番組に出ました。
  撮影はリハーサルなしで、いきなりのスタートでしたが、出来上がってみたら、
  結構笑えて面白く、でも、芯の通ったまじめな構成になっていました。そして知らないうちに
  クローゼットは全公開されておりました。もう、ほとんどお見せするものはありません。
  
   ご覧頂きました方から、たくさんのメッセージを頂戴し、とても恐縮いたしております。

P.S.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」を紙の本で読みたいと
  よく言われます。 いつか紙にできるようにします。
    この本はとても分量が多く、濃厚です。フォアグラのステーキと濃厚なマッシュルームとポテトの
  スープを合わせて頂くような感じです。だから、終わりがけはりんごのシャーベットとミントティもご用意   しています。
     まだお読みでない方はどうか、心してリゾートのフルコースを味わってくださいますように。
  税込千円のフルコースはなかなかのお買い得だと思います。下のどこでもドアから入れます

                      



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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