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リサコラム
連載482回
      本日のオードブル

私が目覚める場所

第10話

「レミの計画」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


幻の
私の
ホテルへ
ようこそ。
奥に見えます
でしょうか?あれが
私の幻の麗しきベッドルームで
ございます。もちろん、天井から素敵な
天蓋カーテンが優雅に掛かっております。
その中で包まれるように眠るのです。
左右の窓には細長いブルーグレーの
カーテンを掛けて品のいいホテルの
インテリアになりました。
シェードのないキャンドル
型のシャンデリア、
大きなベッドに
ブルーと白の
刺繍のある
クッションが
4個転
がって
います。
えっ?
手前の
クローゼット
部屋からは
遠すぎて見えない?
残念ながらここから先は
撮影禁止なものですから。
きもちよさは想像でお楽しみくださいますように。

 
      
  





      

第10話 「レミの計画」


 「先日もありがとうございます、お蔭さまで大変順調な売れ行きです。先日3度目

の追加発注をかけられたそうでメーカーさんから、ぜひレミさまにも使って頂きたい

とのことで、代わりまして私からお届け致します。また次のお部屋でもぜひよろしく

お願い申し上げます」


          


 封書にはぎこちなくも丁寧な手書きの文字が並んでいる。


 レミと呼ばれた女性は片手に封書とそれに添えられた小さな薄い箱を持ち、もう片

方の手には半分水の入ったバケツを持って玄関から寝室につながるウォークイン・ク

ローゼットに入り、バケツを床に降ろした。師走に入り、日を追うごとに忙しくなっ

た束の間の休みの今日がレミにとっては最も忙しい一日になりそうだった。


           


 左右に4mの扉なしのハンガーラックの並ぶウォークイン・クローゼットと呼ぶに

は広すぎるこの部屋は約10畳の広さがある。向って左は外着の服とその下に並ぶ14

個の引き出しには、その服に合わせた靴とバッグが収納されているが、そのほとんど

は新品の頂きもので、さらにその向い側には部屋着とパジャマ、ローブ、ガウンの類

がグラデーションになってずらりと並んでいる。しかし同じくその半数は頂きものの

新品である。その下のやはり14個の引出しは部屋履きが入っている一つを除いてあ

との13個は常に空のままになっている。そして部屋の中央には幅1.m長さ4.2m

UV塗装をした白い大きなテーブルがある。


             


 レミの住むこのマンションは、郊外の高級マンション群を望む築30年を経た建物

で、ただしバブル景気の頃に企画された建物の外観はそれなりの高級感を漂わせてい


たせいか、近くに新しい高級マンションをどんどん引き寄せるように高級マンション

の群れはハリウッド映画に出てくるような街並を作り上げていた。しかし、その内情

は老朽化と高齢化のため、元々から住んでいる住人は3分の1以下に減ってしまって

いた。


             


 ここを購入したきっかけは今から7年前、会社帰りに寄った書店の中のカフェから

始まった。レミは偶然自分の席の隣に座った二人ずれの客の話が入るともなく耳に入

った。2人の内の派手目なスタイルの女性が「ほとんどのTVコマーシャルとか通販雑

誌なんかの撮影は一般のご自宅でやっているのですよ」と意図を含んだ少し弾むよう

な声を出した。もう片方の地味目な服装の女性は「へ~そうなんですね」と普通の反

応した。しばらくそれとなく話を聞いていると、派手目な服の女性は紹介された地味

目な服の女性にここで合い、ロケ場所に部屋を提供してもらう話をしに来ているよう

だった。


             


 派手目な女性は「ぜひ、ぜひご検討、よろしくお願い申し上げます」と言った後、

「結構いい副収入になりますものですから」と最後に小声で付け加えると、地味目な

女性はちょっと表情を変えたが、冷静な声色で「わかりました、前向きに検討させて

ください」と締めくくった。そして派手目な女性が立ち去った後、地味目な女性は冷

めたコーヒーをすすりながらしばらく本を読んでいたが、そのうち席を立って書店を

抜けて出て行った。レミはテーブルに残された名刺をそっと取ると、ポケットに入れ

た。


             


 それから書店を出ると小雨の降る公園を抜けて道なりにぶらぶら歩き、不動産屋の

広告を見て歩いた。次の日も同じく書店でティタイムをした後、反対方向に歩きなが

ら、不動産屋の広告を見て歩いた。そしてそれを続ける内、その中の一つの格安に思

える物件にレミは惹かれた。築30年のマンションは10件以上の売り物件を持ってい

て、レミはその中の最上階から2つ下の部屋の購入を決意した。天井高が高いこと、

駐車場が無料であること、そしてエレベーターが大きいことが決め手となった。そし

て4LDKの部屋を2LDKにリフォームして、広いクローゼットルームと広いベッドル

ーム、LDとクローズドキッチンを作った。


             


 レミの部屋のモデルとなった部屋は10数年前に転勤先から小旅行に出たフランス

の田舎のホテルのスイートだった。幸運にもダブルブッキングで想像以上に広い部屋

にアップグレードされたその部屋には広い寝室と子供用の小部屋とそして寝室と同じ

くらいに広いクローゼットがついていた。2日後、レミは後ろ髪を引かれる思いでそ

のホテルを後にした。その後しばらくして日本に戻るとわざわざその田舎の瀟洒なホ

テルに足を運ぶ程の余裕はなく、忙しい一日はさらに忙しい一日が折り重なって行っ

た。


             


 そしてある日、ネット検索するとすでに別のホテルに名前を変え、内装も一変して

いた。レミはそのホテルの部屋にまた足を踏み入れる意欲を失った。しかししばらく

悶々と考えている内に、そのスイートの部屋がこの世には存在しないのなら、レミの

頭の中に棲みついている部屋を実際に自分の部屋で再現すればいいのかと思うように

なった。そして1年半後、リフォームも完成するとすぐに大事に持っていた名刺の女

性に直接電話をかけ、自宅に招き入れた。


             


 「うわ~、すてき!」女性は大げさな身振りで感動を表したあと、すぐに、「いつ



ならOKですか?」と単刀直入に切り出した。それ以来、幻のホテルの部屋を真似て

作ったレミのベッドルームとその続き部屋の広いクローゼット部屋はロケ場所にたび

たび使われるようになった。撮影の後、服やバッグその他いろんなものがレミにお礼

として進呈され、レミのクローゼットはどんどん賑やかになった。


             


 日も陰って来た頃、やっとすべての部屋の掃除を終えたレミはお礼に贈られて来た

スカーフをクローゼットルームのテーブルの上に広げてみた。四隅にタッセルのつい

た淡いローズ色のウールのスカーフはかなりの大きさでその上にスーツケースを乗せ

ても十分な余裕があった。レミはスーツケースの中に数枚の服と本を入れてスーツケ

ースを静かに閉じると、淡いローズ色のストールを肩にかけて部屋を出た。


          


 この部屋には見知らぬホテル好きのシングルの女性が明日から住むことになってい

る。そしてレミは隣街の新たな新築のマンションに移転することになっていた。そこ

でまたレミは今までと変わらず新たなロケ場所の生活を続ける計画だった



   




   
*上のイラスト及び写真から「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。
  
   *「リサコラムの部屋」は10最後に0の付く日の連載です。


P.S.1
   「ロケ場所にお願いします」と言われたら不安な気分かもしれませんが、、
   考え方を変えると、いつも整然と暮らせるからそれはいいことかもしれません。
   お部屋をインテリアごと高く売り抜いた方もおいでのようですし。


.S.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   リゾートとは何かについてこれも真剣勝負で書いたものですから、
   インテリアだけの本ではなく、難しい部類のコラムに入ると思います。
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                      



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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