MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載486回
      本日のオードブル

ある13日間

第2日

「痕跡のない二日目」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。


パリのアパルトマンに
似せたこのお部屋は傾斜した
天井高で3.3mもあるのです。
ワンルームのような70平米のお部屋
ですが、広いバスルームの横には
ベッドルームがあり、
導線もよく、さらに
天井から切れた
フレンチ窓から
手入れの
行き
届いた
季節の庭を眺められます。
リビングにはお茶とお菓子の用意が
ありますし、もちろん庭でお茶もできます。
このアパルトマンは何かに集中したいあなたの
ために作りました、シンプルなインテリアですが、
センスには自信があります。フレンチなテイストで
すてきななオフィスもございますから、そこで週末、
ひとり作家活動をするももよし、新たなビジネスを
模索するのもよし。パリに行けずともパリを味わう
週末、あるいは平日というのはいかがでしょうか?

 
      
  





      

第2日 「痕跡のない二日目」



HIROMUちゃん、それじゃね」すっと立ち上がった身長180cmはある長身の女性は、

1
分ほど前に部屋に入って来たHIROMUに透き通るような声をかけた。10畳ほどの個室

は白いデスクに、白いレザーの回転椅子とテーブルセットだけのすっきりした雰囲気

がここちよいオフィス。


              


 「お疲れさまでございました。お車は玄関で待っております」HIROMUが腰を折っ

てお辞儀をすると、立った女性社長はさらに長身に思えた。女性社長は「また来週よ

ろしくね」と会釈をすると、HIROMUの横を抜けて自動ドアの前に立った。すぐに女

性社長を外に出したドアは音もなく閉じた。


            


 HIROMUはここでは“社長秘書”とも呼ばれる。しかし、HIROMUはいつも白いエプ

ロンに運動靴を履いているため、オフィスビルの廊下ですれ違う来客によくお手洗い

の場所を尋ねられる。


              



 HIROMUはドアが閉まるのを確認すると、時計のストップウォッチを押した。そし

て駆け足で同じ部屋に設置された洗面室脇のクロークから脚立、バケツと、クリーナ

ー、アルコール噴霧器、ふきん数枚の入ったケースを持って来た。


              


 まずデスクの椅子を部屋の隅に移動すると、新聞を床に広げた。それから窓の下に

脚立を置いてレザーのブラインドを外すと新聞の上に置き、ムース状の中性洗剤をま

んべんなく噴霧した。次にまた5,6数枚の新聞をデスクに広げると、引出しを引い

て、そのままひっくり返した。それからゴミと文房具を選り分けてからアルコールを

噴霧したふきんで文房具をふきあげ、引出しの中を小さな掃除機で細かなごみを吸い

取った後でふきんで拭き上げ、文房具を所定の位置並べた。


              


 次にブラインドに霧吹きで水を吹きかけてから乾いた布で1本1本をふきあげると

また脚立に乗って窓に取り付けた。机やいすは家具用のクリーナーで磨き上げた。

HIROMU
は7分袖のシャツからでている時計をちらっと見た。20分経っていた。椅子

を戻して座り、椅子の高さを上げると椅子を押し、さらに少しだけ戻して位置を確認

した。最後に掃除機で窓に平行に細いNを書いてゆくと、20mmの濃いブラウンの毛

足の絨毯にはきれいな横ボーダーができていた。掃除機を持ってあとずさりで自動ド

アを出ると、もう部外者は中に入ることができない。掃除機を専用ロッカーにしまう

と、地下駐車場で警備員から鍵を受け取り、女性社長を駅に送り届けて戻って来た黒

のアウディを出した。


              


 大通りを避け、細い道をタクシー運転手のように小刻みに刻みながら信号を回避し

て5分後に1軒の小さな白い家の前に到着した。


              


 すぐに駐車場から脇の庭を抜けて勝手口から入ると、まずは寝室のシーツ替えをし

てから、リビングのクッションカバーもカーテンも取り外した。クローゼットに残っ

ていた服もすべてたたんで袋に入れ、クリーニング袋に仕分けした。そして持参して

来たクリーニング済のカーテンを取り付けると、キッチンに入り、引出し、食洗機、

オーブンまですべてのクリーニング作業を終え、バスルームも掃除すると最後に掃除

機でまた細いNを描きながらクリーニング作業を終えた。時計は7時を指していた。


              


 HIROMUがメールを送ると数分後、HIROMUと同じエプロンをかけた女性スタッフが

かごを下げてやって来た。LDのカウンターの上にお茶セットを用意し、ケーキスタ

ンドにお菓子を並べ終えると、ラップで覆い、二人は2台の車で駅前のHIROMUの事

務所に向った。黒のアウディは駅前の駐車場に停めた。HIROMUは駅の階段を降りて

くる白いコートを来た小柄な女性の姿を見つけるとすぐに近寄って腰を折り、声をか

けた。


             


 「おかえりなさいませ」女性社長は、テープを切ったウイナーのような晴れ晴れと

した表情で「ああ、ただいま~」と言った。これから彼女は駐車場に停めてある黒の

アウディで小さな白い家に寄った後、明日はHIROMUが整えたオフィスに入るはずだ

った。


              


 HIROMUには十数人の社長から社長秘書と呼ばれる。さらに数十人のスタッフから

は社長と呼ばれる。HIROMUのビジネスはオフィスのハイレベルなクリーニングから

始まった。そのうち、小さなオフィスがたくさん入っているビルのオフィスで平日の

会社と土日だけのセカンドビジネスをする会社が一つのオフィスをシェアする手助け

をしながら、双方のオフィスクリーニング業を行うようになった。それに加え、ホテ

ルのように気軽に使えるパリのアパルトマン風のおしゃれな賃貸アパートを組み合わ

せたところ、遠くの自宅から通うための時間も無駄なく仕事に使えるし、さらに仕事

に集中できるし、優雅な旅気分も味わえると女性社長、セカンドビジネスを目指す主

婦、OLに大人気となった。HIROMUのビジネスはどんどん広がり、今では順番待ちま

で出てきてしまった。


              


 そこまで人気を博した理由は3つあるとHIROMUは常々思っている。見ず知らずの

2人の社長が一つの会社、別宅をシェアする上でHIROMUのポリシーともいえるもの

だった。1つ目は可能な限りインテリアの趣味を合わせること。文房具の配置さえも

好みに合わせて変えること。2つ目は前の使用者の痕跡を残さないこと。部屋でも、

デスクでも車でも共有するものすべてにおいて。もしも2人の社長に身長差がある場

合は座席の位置、椅子の高さにさえ気を配ること。


              


 3つ目は絨毯の上の掃除機の痕跡だけは残すこと。足跡の残る絨毯はそのためにあ

るとHIROMUは思っている。



   




   
*上のイラスト及び写真から「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。
  
   *「リサコラムの部屋」は10最後に0の付く日の連載です。


P.S.1
     2016年の新シリーズ開始と合わせて、「リサコラムの部屋」も新シリーズを
   始めました。文中に出てくる黒のアウディは、「リサコラムの部屋」第1日目の
  「Mikiとトリアノン・コード」に関係があります。「『ダビンチ・コード』の映画の中で
  黒のアウディを追いかけるシーンがとてもかっこよかった」とMiki様のコメントを受けて、
  あえて車名を入れてみました。
   ぜひ、上のイラストか下のお写真から入ってお読みくださいますように。


          

          朝もやに煙る幻想的なある有名な庭園です。
                           撮影:Miki様



P.S.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   リゾートとは何かについてこれも真剣勝負で書いたものですから、
   インテリアだけの本ではなく、難しい部類のコラムに入ると思います。
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                      



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.