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リサコラム
連載488回
      本日のオードブル

ある13日間

第4日

「RemiとSayaの4日間」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



壁にも床にも
石をふんだんに使い
直線を生かしたデザインの
優雅なアジアンリゾート風。
濃い茶の石の廊下のバルコニー
ブルーの石風タイルを敷き詰めた
プール。ジャグジーと広いバスルーム。
階段をとんとんと3段上がれば、そこから先は
自動ドアとミラーガラスで仕切られたベッドルーム
これが私の理想の家のひとつですが、残りの99個は
またおいおい絵に描いて事細かにご説明いたしましょう。

 
      
  





      

第4日 「RemiとSayaの4日間」



 「水ぬるむ 仲間 餅」足長先生はチョークの粉をはらはらと床に散らしながら

黒板の長さいっぱいに白い文字を書いた。そして振り返る前に、思い切り「.」と打

つと、また白い粉がパッと飛び散った。


             


 「それでは、次の時間までにこれらの言葉からイメージするテーマでタイトルを

つけ、300文字以内の文章を提出するように」教室内に「うわ~」といううなり声が

渦を巻いた。と同時に終了のチャイムがその渦を収束させた。


 そして一斉に生徒たちが椅子から立ち上がったとき、通路を隔てて同じ並びの

Remi
Sayaの二人はチラッと顔を見合わせ、二人共同時に少し遅れて椅子から立ち

上がった。


 RemiはクラスNo.1、そしてSayaNo.2と言われていた。


             


 授業が終わると、二人は外掃除をしに中庭からグラウンドを見渡せる校庭に出て

少しだけ離れて、地面にしゃがみ込んだ。Sayaが「今日は草100本抜いて終わりにし

て、うちでお茶しようよ!」とRemiの方を向いて言うと、Remiはぺこんと頭を下げ

た。Saya 100本草を抜き、Remi103本抜くと、ゴミ焼却炉に持って行き、二人

はまた少しだけ距離を置いて教室に戻ると、少しだけ離れて校門を出た。Remi

Saya
も二人ともクラブ活動をやったこともなく、高校2年になっていた。


 二人は校門を出るとそれぞれ反対の方向に歩き出した。そして、40分後Remi

Saya
の家の玄関にいた。エプロンをつけたSayaは「いらっしゃいませ」と言い、


そしてRemiは「こんにちは」と言い、SayaRemiをキッチンに案内した。

 真っ白で清潔そうなキッチンは大きな窓からの日差しを受けて白いキッチンカウ

ンターがまぶしい白い光を反射している。


             


 Sayaはキッチンでハンドミキサーのかすかな回転音をさせ始めた。Remiはキッチ

ンカウンターの白いハイスツールに腰かけるとカウンターに両手を重ねて置いた。


 Sayaは「今日は両親ともに遅い日だから」と言うとボウルにまた白い粉と砂糖、

赤い粉を小さなスプーンでほんの少しだけすくって入れハンドミキサーがまたほわ

っと白い粉を舞い上げ回転し始めた。


             


 「足長先生の課題、思いついた?」Sayaはキッチンの引出を引きながら自分の前

でじっと様子を見ているRemiに言った。「300字?ううん」Remiが頭を横にふると

ショートカットの髪の毛がはらっと揺れた。「Sayaちゃんは?」「私も、ううん、

だよ」とSaya が答え、それから3つほど数えた後で「そっか」とRemiが言った。


「まだ4日あるしね」「だよね」Remiはそう言い終わると、またSayaの手の動きを

じっと見つめた。


             


 Sayaは小さなフライパンを出すと刷毛で薄く油を塗り、その中にお玉で白いどろ

っとしたものをすこしずつ慎重に注いだ。直径1cm程のわずかにピンクがかった

白い円はふつふつと音をたて形を変化させていった。Saya は竹串をすっと下に滑

らせると円をくるっと裏返した。それを6回繰り返しそしてほどなくステンレスの

プレートには淡いピンクの平たいものがきれいに並んだ。それからSayaは新たな

ボウルを出すとその中にまた粉状のもの入れ、ぬるま湯を少し加えハンドミキサー

を回転させた。それから砂糖を加え木じゃくしを使って練り始めた。しばらくする

とねっとりボウルにへばり付いていたものはだんだんと中心に集まり丸いきれいな

白いかたまりにまとまった。そこにまた少し赤っぽい粉を混ぜてさらに形を整え始

めた。次にラップの上にその平たい円を置きその上にレーズンを散らした上にちい

さいかたまりを乗せるとさらに桃をスプーンで丸く切り抜いて乗せて、ラップごと

茶巾しぼりのようにくるっと丸めて裏返し、白い皿の上に乗せた。その上に白い粉

を振ると、「これ、一応、粉雪のつもり」と、Sayaはにやっと笑った。


             


 それから12分後Sayaはけたたましい音をたてる白いケトルから茶葉の入った

ガラスのポットに湯を移した。白い蒸気はSayaのメガネを一気に白く霞ませずっと

黙ったままで一部始終を見ていたRemiはさっとティッシュをSayaに渡すと、「メガ

ネ」と言った。「ああ、ありがとう」Sayaは曇ったメガネを一拭きすると、皿とお

茶のセットを乗せたトレイを少し持ち上げて「ハイティでございます」と言いなが

ら、Remiをダイニングの白いテーブルに案内した。


 「今日のお菓子はなんて言うの?」Remiは少し首をかしげると、木のフォークを

持ったままで逡巡した。「さあ?なんにしようか?即興だしう~ん」Sayaは唸り

ながらもフォークで半分に切った餅菓子のかたまりをぱくっと口に入れた。Remi

同じ形に切ってぱくっと口に入れた。


             


 「う~ん、さいこ~!Sayaの最高傑作じゃないの?おいし~!」Remiはこぼれる

ような丸いほほをさらに丸く膨らませて笑うと細い目は線になった。


 それから2週間後RemiSayaの二人は足長先生の現国の時間に教壇を挟んで両脇

に立っていた。足長先生は「水ぬるむ 仲間 餅」と黒板のタテいっぱいに文字を

書くとチョークの粉はふわっと飛んだ。まずRemiが足長先生に促されて、手に持っ

た原稿用紙を読み始めた。


             


 「白いほうろうのボウルに白玉粉を入れ水で溶いてフライパンで丸いうすい餅を

焼く。別のボウルに白い餡の粉を入れる。様子を見ながらぬるんだ水を少しずつ足

してハンドミキサーを回すとボウルの周りにくっつき始める。その餡をヘラで中心

に集めるように練ってゆくと、やがてまとまり丸い形になってゆく。丸く焼いた平

たい餅の上にその餡を乗せて、さらに果物を乗せひっくり返すときれいなまるい餅

のお菓子になる。こうしてぬるんだ水と白い粉はまじりあってひとつの形になり、

お菓子となる。それを仲間のふたりが食べる。しばらくの間ふたりの仲間は談笑し

て、別れる。そしていつの日か、もう戻らない仲間になる。」


             


 Remiが朗読を終えると教室はざわついた。叫び声とぱらぱらと拍手とがまじりあ

い、そして止んだ。足長先生は次にSayaに朗読するようにと言った。Sayaは黒板の

文字をちらっと見てから読み始めた。


             


 「私のベッドルームから4段の石の階段を下りるとガラスのドアがすうっと開き

庭に面したプールに出る。私は足からドボンと飛び込んでしばらく泳ぎ続ける。

そののち、プールの横の丸いジャグジー風呂に入る。午後4時半、プールサイドに

ハイティの準備をしにシェフがやってくる。今日も私の大好物の餅菓子を持って。

これが私の夢の暮らし。そこには広いベッドルームと自分専用のプール、ジャグジ

ーにハイティがある。ぬるんだ湯の中で時を過ごし、お茶を飲む。私はきっとこれ

から普通の日々を丹念に重ねるだろう。この4つの仲間を手に入れるために。そして

いつかその仲間とも別れるために」ぱらっぱらっと拍手が湧いた。


             


 足長先生は拍手が止むと教壇に上がった。「二つの作文には共通点が2つあった。

一つは餅菓子が出てくること。そして「もう一つは、」と言いかけると教室を見渡

して、「もう一つはタイトル。2つともタイトルが『ピリオド』だった。足長先生

は「水ぬるむ 仲間 餅」の文字列の最後にまたチョークで思い切り「.」とピリオ

ドを打つと、ぱっと白い粉が飛び散った。





   




   
*上のイラスト及び写真から「リサコラムの部屋」へ入れます。
    こちらも人気のページです。ご愛読に感謝致します。
  
   *「リサコラムの部屋」は10最後に0の付く日の連載です。


p.s.1
    今の高校生はもっと優秀だと思いますが、自分が優等生になったつもりで書きました。
   すべてフィクションです。


p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   リゾートとは何かについてこれも真剣勝負で書いたものですから、
   インテリアだけの本ではなく、難しい部類のコラムに入ると思います。
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                      



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

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