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リサコラム
連載562回
      本日のオードブル

思い返せばいろいろ
ありまして


第4話


「似た者どうし」



木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




オレンジの屋根に
青緑の塗り壁の
家がつながった
ここは別荘かホテルか?
小径に敷かれているのは
玉砂利で、岩と灌木の庭。
椅子とテーブルのセットがあって
テーブルクロスがかかっていて、
そして小さな小屋はきっと物置小屋だね。
自転車はあの少年のものじゃないから、
ホテルで貸し出しているものだろう。
パリから50kmくらい、
海からちょっと入った
田舎のあの街?
大体、想像
ついたよ。

 
      
  





       


第4話  「似た者どうし」



   佑二はユニオンジャックの柄の入ったタオルハンカチをポケットから出すと

額の汗をぬぐった。「暑いところ、ありがとうございます」祐二は簡易なテーブル

が1台あるだけの部屋に入って来た男性に軽くお辞儀をしてから椅子をすすめた。


              


 「こちらこそ、お忙しいところ、お時間を取ってくださりほんとうに畏れ入りま

す」フジタというその男性は腰かけると、ちょっと間を置いてから、「あの、その

アクアスキュータムですか?」と祐二のほうに身を乗り出した。折りたたみテーブ

ルがギイと鳴った。


              


 「アクア?何ですか?」佑二はあっけにとられた顔でハンカチをズボンのポケッ

トに押し込んだ。祐二の折りたたみ椅子もまたギイと鳴った。「アクアスキュータ

ムです。いえ、別に、大したことではありません」「そうですか、しかし気になり

ますね」祐二は大きな目をさらに見開いた。「ああ、先生、あれですか?職業

的なご興味ということで?」フジタは佑二の顔を見た。「いいぇ、その、アクアス

キュー」「タム、アクアスキュータムです。ブランドの」「ああ、これです?」

祐二はまたポケットからハンカチを抜き取った。


 「いえ、失礼いたしました。それで今日は?」フジタは話題を変えた。「ええ、

フジオ君のことです」


「はい、はい。息子のことですね、まあ、当然ですね。特別面談ですから」

「ええ。フジオ君はご自宅ではどんなお子さんですか?」「ああ、どんなと言われ

たら答えに窮しますが、その、なんにでも関心を持つといいますか、でもまあ、

いい息子だと思います。親バカですが。勉強はさっぱりだと思いますがが」

「そこなんです。知識に非常に偏りがあります。まったくできない科目と恐ろしく

秀でている科目と言いますか、地名と言いますか」フジタはそれを聞いてやっ

ぱりと言う感じでうなだれた。


              


 「フジオ君は算数、理科は
よくできますが、国語、社会はかなり偏りがあり、

音楽、図画工作、家庭科と
体育はちょっと」「つまり、文系はだめ、そして芸

術性も運動能力もなしということでしょうか」「いいえ、なしとは」祐二はネ

クタイを少しだけ緩めた。「先生、どうかお楽になさってください。私が申し上げ

るのも何ですがあの、それ、そのネクタイはアルマーニですね、」「はっ?」

「いえ、ネクタイはアルマーニですね」「いえ、そんな高級品なんかではありませ

ん。その、そこらへんで買った安物です」「いや、そんなことはないでしょう。

ちょっといいですか?失礼して...」フジタは細長いテーブル越しに祐二のネクタ

イを手にすると、裏返した。「ああ、ジュリアンですね」「ジュリアン?いえ、

着るものは別にこだわりも何もありません。直感で買っただけです。それで、今日

は、」祐二がそう言うと「失礼いたしました。ほんとうに」とフジタは詫びを言っ

てから急に姿勢を正したため、椅子がまたギイと鳴った。


               


 「それでは話を進めますが、先ほどもお尋ねいたしましたが、フジオ君はご自宅

ではどんなお子さんなのですか?」祐二の2度目の質問にフジタはしおらしくなっ

た。「ああ、その、まあ、私の息子ですから、落ち着きがなく、うるさくずっとし

ゃべっていて、それで、やはりDNAというものはすごいものですね、私の子供の

頃とやっぱり似ているような気がします


               


 「DNAの問題かどうかは私にはわかりませんが、国語に関して申し上げれば、

感想文はまるで書けません。しかし、不思議なことに、ものの描写を文章でさせる

とすばらしいのです。社会科は特定の地名の暗記力だけ秀でています」


 「たとえばどんなことでしょう」

 「ええ、ロシアとカナダの場所は反対に覚えているのに、コーダジュールと言い

ますか、地中海側の都市から、モナコ公国までの海岸沿いの都市名やその街の様子

などは奇妙なほど詳しくて。それにインドネシアの各都市、バリ、そして、タイ、

マレーシア、シンガポールの地名、海岸の地名にも精通しているようです。あの、

バリ島のなんていいましたか?変な名前の、ジンバラとかウブド?「ああ、はい、

ジンバランにウブドゥですね」フジタは困惑を照れ笑いで包んだような表情で言

った。「はい、はい、それでです。それで、ある時、教室で生徒に世界の知ってい

る地名を書かせたら、ノート数ページを使って細かく数限りなく列記しました。

ほかの子は20個にも満たないのにです。しかも、彼なりにグループ分けされてい

るようでした。私はイギリスのバースという地名がbathからきているとは知りま

せんでしたが、温泉の出る場所だという意味もフジオ君が教えてくれたんですよ。

彼、フジオ君は私のこの、手帳に….」祐二は胸ポケットから手帳を抜き取ると、

「ええと、バースに、イタリアのサルマッジョーレ、フランスのエヴィアン、ドイ

ツのバーデン、ハンガリーのブタペストそれに….」佑二は手帖をぱらぱらめくり

ながら、「え~、あ~、サルトニア、これはええと、」とつかえると、フジタが

「イタリアですね」とすぐに口をはさんだ。その顔は先ほどとまるで違う晴れやか

な表情になっていた。


               


 祐二がまだ手帳をめくっていると、「先生、その~、中断して申し訳ございませ

んが、それ、その先生の手帳は、ほぼ日手帳では?ありませんか?」とフジタが聞

いた。祐二はポカンとした顔をした。


               


 「ほぼ日?」「ええ、糸井重里のほぼ日手帳でしょう?」「さあ?ああ、この手

帳、フジオ君からもらったものです。先の地名入りで」「ああ、そうですか。やっ

ぱり。すみません。余計なことをしてしまって」「いやあ、そんなことはありませ

ん。結構重宝しています。それで話を戻しますが、私が世界の国名を黒板に書いて

首都当てクイズを出したら、フジオ君はすぐに手を挙げて答えを一気に全部書いて

しまったんです。もちろん全問正解ですが、さらに、その都市の中のさらに町名ま

で書き出して….それが何の町名だとかは言わないんですけどね、」


               


 「ああ先生、ほんとうに相済みません。私の教育が間違っておりましたせいで

す。実は2歳から、私と息子の二人旅を続けておりまして、二人旅と言いましても

母親がいないものですから、私の頻繁な海外出張に全部連れてゆきましてね、それ

で、ベビーシッターをつけてひとりホテルに預けて、それ以来、ホテル好きになり

まして、それから自分でホテルを検索して覚えるようになったんです。最近では、

パリもロンドンもミラノもローマも飽きたそうで、もっとマイナーなフランスの田

舎街の隠れ家みたいな場所に興味を持っているようで、ほんとうにすみません」


               


 「はあ、なるほど、そういうことですか。そんな感じがしなくもなかったのです

が、なるほど、それで偏った社会科の知識になっているわけですね」祐二は腕組み

をした。


               


 「あの、それで、さっきの話に戻りますが、世界の都市の地名で町名まで列記し

たあれは何の町名なのかおわかりでしょうか?どうも腑に落ちないものですから

祐二は暑さか何かでぐったりし始めたフジタの顔を見た。


               


 「ああ、先生、あれは、フォーシーズンズのある場所だと思います。四季という

意味ではなく、そのホテルチェーンのある町名のはずです。ほんとうに、なんてお

詫びしたらいいか」「いえ、そういうことですか。なるほど。ありがとうござ

います。これでちょっとすっきりしました。ああ、それにアクアスキュータムでし

たっけ?そのハンカチも私の誕生日にもらったものです。フジオ君から」


               


 「ああ、やっぱり。親子似たものどうしで、どうも変な気が利きすぎまして、

重ね重ね......




   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
   リサコラムは
土曜日の更新に変更させていただいております。

 一芸に秀でた神童のような子供は私の周りにもいましたが、
今、とてもうらやましいです。そして、今でも、そんな大人を見ると
きっと、子供の頃はと、想像してしまいます。


  「もの、こと、ほん」は下の写真から。
           
             


p.s.2
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
    英語版を出版いたしました。
    "Bedroom, My Resort"の英語版がようやく出版されました。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。

           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.2
    下は日本語版です。
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
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