MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載691回
      本日のオードブル

あるデザイナーの夢

第12話

「あの部屋、気に入った?」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



グレーに
ピーコックブルーの
線書きの模様が入った絨毯
白い大きなソファが一つ。
白い一人掛けのカウチと
ボルドー色のカウチが一つ。

ボルドー色、ピンク、ダークなピンク、
そしてピーコックブルーの
クッションがランダムに
いや、計算されて
置かれています。
白いカーテンには
ポムポムのトリミング
なんだかワクワクしてきますね。




 







        

第12話 「あの部屋、気に入った?」




  「Rikoは、Sariの真新しい明るいサロンの中に足を踏み入れた。


            


 思えば、初めてSariの部屋に掃除に来たのは、まだ3か月前なのに、

恐ろしく長い時間が経ったように思える。新しいサロンはもともとのSari

の部屋のお隣で、壁の間に出現したドアで2つの部屋を行きできるようになっ

ていた。


            


 シェードの間から漏れる光が広い部屋を静かに照らし出し、天井についた

ファンのおかげで暖房をつけなくてもほのあたたかく快適そのものだった。

冬枯れの景色を映す窓と大きなソファの広い部屋。その光景はまるで映画の中

か、画像で見る高級ホテルのサロンのようでRikoは掃除機を片手に、バケツ

をもう片方の手にたままでしばらくぼうっと眺めていた。その時間はおそらく

20秒ほどだったが、Rikoには10倍ほどにも長く感じられて、はっとわ

れに返ると、慌てて掃除機のスイッチを入れた。そして、静かな掃除機の音を

聞きながら、「そっか、まだ3か月しか経ってないんだ」と独りつぶやいた。


            


 Sariのこの新しい部屋はつい1か月半ほど前にお隣の部屋に空きが出た

そうで、それを知ってSariはすぐに手付金を打ってから、大至急リフォー

ムを依頼したらしい。しかし、その間もSariはまた、コレクションの準備と

かで、慌ただしく出たり入ったりを繰り返していた。



            


 そんな忙しいSariにRikoが会ったのは一番最初の面談の日だけで、

その後は、短いメッセージの実のやり取りだけで、お隣の部屋を購入してリフ

ォームを依頼していることも、ごくごく簡単な1文で知るだけだった。


 「忙しいって、人をこんな風にも行動的にするものなのかな?」Rikoは

Sariの常軌を逸しているようにしか見えないロケット並のスピードに驚き

ながら、週3回のルーティンの掃除と工事の後の2回の掃除をした。


            


 テレビや画像で見るNYのかっこいいマンションのようなこの新たな部屋は、

明るい角部屋に当たり、白い大きなソファの上には大小たくさんのクッション

が並び、センスの良さを見せつけていた。そして、この部屋はSariのイマ

ジネーションを刺激させる仕事場、そして打ち合わせのためのスペースとして

使うことになったようだった。


             


 Rikoは一段落すると、お隣の煉瓦造りの低層階のマンションの壁と、

街路樹が美しい並木道を眺めながら、「あ~」とため息をついた。Rikoの

アパートもお隣の空いた部屋を大家さんがコネクティングルームとして使わせ

てくれてはたが、やはりその空間の広がりと、天井の高さ、そして、Riko

にもわかる高級なファブリックを使ったインテリアといい、さらに、センスの

よさは比べようもなかった。


            


 Rikoは「は~」と深く息を吸い込んでから、「ほっ」と吐息を吐き、

自分に気合を入れた。次に白い手袋をした手で、たくさんのクッションとソフ

ァに粘着ローラーをかけ、拭ける場所はすべて、最高級の洗剤を含ませた液に

浸したふきんで拭き上げた。ラベンダーの香りが部屋の中にほのかに漂い始め、


Rikoはやっと、20畳のサロンとリビング、そして水回りの掃除を終えた。


            


 Sariの部屋は、最初のかなり散らかった雰囲気は跡形もなくなったが、

その3か月の間、Sari自身は3回も海外出張に出た。1回はヨーロッパ、

それから韓国とシンガポール。さらに日帰りの国内出張にも度々、出かけており

Rikoは預かっている鍵で誰もいない部屋を開けて部屋に入り、掃除をし、

また誰も使った形跡のない部屋に入り、掃除をすることも数回あった。時々は

Riko宛てに玄関先にお土産が置かれてあることがあった。ほとんどはチョ

コレート菓子やクッキーだったが、Rikoはそれを興味津々で家でじっくり

眺めてから1日に1個と決めて大事に味わって食べた。


            


 Rikoはすべて掃除が終わると、ひとつひとつ指さし確認をしながら、

チェックリストに沿って掃除もれがないかをチェックし始めた。カーテンは先日、

Yukoさんから伝授された通りに、ドレープを寄せてからドレープを引っ張

り出し、美しい弧を作りながらタッセル掛けにタッセルをかけた。


            


 「よし!」Rikoはまた掛け声を自分にかけた。すべてホコリと汚れを取

り除いたSariの部屋は、ちょっと冷たいようなラベンダーの香りが漂う心

地よいリゾートホテルのラウンジの空気に変っていた。それからRikoは記

録のため、すべての部屋の写真を撮ると、だれもいないサロンのドアの前でお

辞儀をした。そして後ろ歩きにドアの外に出て、自転車置き場に行くと、先ほ

ど撮影した写真を部屋ごとに2枚ずつ選んだ。サロン、リビング、ぴかぴかに

磨き上げたキッチン、バスルーム。Sariはきっと帰りを楽しみにしてくれ

るだろう。そんな思いで、Rikoは吹きさらしの自転車置き場で熱い思いを

抱きながら、写真を添付すると、メッセージを書いた。


            


 「サロンのピンクのクッションの横に、簡単なお礼の手紙を置きました。い

つもお土産ありがとうございます。」それだって、どこに置けばかっこいいか

ずいぶんと悩んだ挙句だったけれど。そして、数秒間逡巡した後で、震える指

先で送信ボタンを押した。


            


 Rikoは、スマホを鞄に入れるとすぐに自転車に飛び乗のり、全速力で自

転車をこぎ始めた。授業の開始時間が迫っていた。


            


 走り始めて数分後、チャイムが鳴った。「あっ、Sariさんだ」Riko

はしばらく我慢して、住宅地を走り抜け、大通りに出たところの信号で止まり、


どきどきしながらSariのメッセージを開いた。そして、しばし呆然とした。


            


 「いつもきれいにしていただき、ありがとうございます。明日の晩、帰るの

がとっても楽しみ実は、Rikoさんを真似して、コネクティングルームに

しようと思って買ったの。あのお部屋気に入った?





  


 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1
    サロンっていい響き。
    リビングより、多目的でイマジネーションが湧いてくる感じ、
    そして優雅でハイソで。なによりぐたってならない感じがすてき!


p.s. 2  インスタグラム始めました。
    私の部屋ばかりで、つまらないかもしれませんが。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2019年12月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.