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リサコラム
連載913回
      本日のオードブル

『Audrey』

第3回

「踊る会議」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルーのアンサンブルドレスを

来た女性は

もちろん、オードリーになり切っているようです。

オードリー・クラブのメンバーは

おlそらく全員がそうでしょうけれど。


 



第3回 「踊る会議」




 「そもそも人に番号をつけて整理整頓しようなんて、学校じゃあ

るまいしね。それってどうかと思うわよ」ひとりが甲高い声を上げ

ると、怒声さえも交じり、議長はひっくり返りそうになった。


            


 議長は心の中で自問自答した。「ここはオードリー・クラブの初

会合だし、みんな大人しく、エレガントな面々の集まりだったんじ

ゃない?それは思い違い? 勘違いしていたのは、もしかしたら、

自分だけ?いや、まさか、でも、きっとそう?」


            


 そんなお上品さとは対局にある怒声に乗じてか、「そんなバカな

マイナンバー制には私も絶対反対よ!メンバーに番号ふるなんて

必要ないでしょ、そもそも!」「そうそう、私たちのオードリー・

クラブに会員番号なんているのよ?」と続いた。


            


 「おっしゃる通り!」と言って手を挙げたのは身長180センチ

近い長身の女性。さらに髪の毛をアップした夜会巻きにしている

ため、さらに10㎝は高く見える。「日本人の私たちにもそれぞれ

番号が付けられてしまいましたけど、こんな趣味のクラブ員にまで

そのような扱いをすることは、すでに時代遅れです。オードリー・

クラブには個々人の個性だけを重視した別の管理方法があると

思います」


            


 「それってナチズムだと思う。人を番号で整理しようなんて刑務

所か、収容所でやることでしょ?まさに上から目線のクラブ管理だ

わ!」その言葉と同時に一斉に大勢の視線がドッと議長に集中し

た。議長は一瞬のだけたじろいだが、胸を張ったままで、「もちろ

んそんなつもりは全くございません。ただ便宜上でも、番号をつけ

させていただかないと会員が何人なのか、今後の出入りで管理がで

きなくなってしまうのです。それではあまりに不便だと思います。

さらに、様々な作業もうまくいかなくなることをきっと後で実感な

さると思います。」


            


 「作業?私たちがこのオードリー・クラブに入った理由は作業す

るためじゃないわ!それどころか、オードリーに対するなりきり

レベルを競い合うためにここにいるんだから。そんなナンバリン

グなん一切必要ないです。何ならみんなが同じオードリー・ヘプ

バーンという名前でいかがですか?」10数人から笑いの声が

上がったようだった。


            


 「ザッツ・ライト!」会場である古い教室の一番隅っこに座っ

ている1人が小さく声を上げた。小さな声は以外に響くものだと

議長は思いながら、次なる作戦を立てるか、引き下がるかの瀬戸

際に来ていたところ、またひとりが発言した。


            


 「私たちは皆、大勢でひとつのオードリー・ヘプバーンになりた

いわけではありません。彼女の生き方、そして彼女の魅力、そして

彼女が残した様々なすばらしい言葉を私たちが日頃どのように生活

の中に生かし、そして新たな生き方をみんなで語り合い、さらに素

晴らしい個々人の人生にしていこうという、そのためのクラブでは

ございません?」その発言に対して、拍手が沸き起こった。


            


★議長はさらに窮地に追い詰められた。ここで一発逆転するため

には、自分が発言するしかない。しかし、迷っている間に、檀上

の議長の脇にやって来たのはブルーのロングドレスを着た美しい

女性だった。


            


 「皆さんナンバリングなんて、ささいなことで時間を無駄にする

のはやめませんか?オードリーはそんなことをする人ではなかった

と思っています。彼女は常に前向きで、ひたむきでした。先ほど、

どなたかが、おっしゃった『ナチス』と言う言葉、それはオードリー

が最も忌み嫌った思想でもあると思います。しかし、ご存知のよう

に彼女のお父さんはナチスに協力し、そして家族を捨てた人です。

まだ彼女が6歳の時でした。そんな幼さで父親と生き別れ、母は毎

日毎日泣き暮らしているばかり…そんな母ひとり、子ひとりで生き

て行かなくちゃいけなくなったんですから。幼いオードリーは何も

できなかった。その時、彼女にかかった重圧はどれほどのものなの

だったのだろうかと私はいつも想像します。


           


 その幼い頃の愛情の喪失感と恐怖の記憶から、引退後は国連の

ユニセフ大使として、多くの子供に愛情を注いだのだろうと、

もちろん皆様ご存知のことですが、そう言われています。私はなぜ

こんなにも長くオードリーが愛されているのかと言う理由のひとつ

が平等な精神だと思います。相手が貧しくあろうと、豊かであろう

と、常に相手を気遣い、思いやり、優しく微笑みかけ、決して嫌味

なことは言わない。そして質素な食卓で満足し、豪華な食事をしな

かったといいます。それは食べられなくて困っている人がこの地球

上には大勢いるからだったそうです。その彼女の気高い精神が私は

もっとも好きなところです。この色とデザインが彼女のそのピュア

で気高い精神を表しているのではないかと感じています。ですか

ら、彼女が着た様々なドレスの中で、ほとんど注目を浴びなかっ

た『パリで一緒に』のタイピスト役のこのブルーのアンサンブル

のナイトドレスが大好きです。これは自分で作りました。シンプル

な袖のないサテンのブルーのドレスの上にレースのローブを羽織っ

ています。彼女が最も清楚で百合のような花に見えたシーンはこの

ドレスを着た短い場面だと私は思うのです。もちろんローマの休日

やその他たくさん、清楚ですばらしいドレスはありますけど、20

年前はじめて見た時から一目惚れしました。ウェストの大きなサテ

ンのリボン、刺繍のローブ、髪に結んだブルーの細いリボンまで、

完璧に彼女の良さを引き出していると思います。皆さん、番号など

という、デティールにこだわるのはやめて、もっと私たちみんな

の共通項、オードリーについて自由に語り合いませんか?」


            


 手作りで美しく再現されたブルーのアンサンブルドレス姿は凛

として、オーラが漂っていると議長も思った。さらに彼女のよく

通るその声で会場は静かになった。それからパラパラと拍手が生

まれると、その音も増え始めた。


            


 ブルーのドレスのオードリーはくるりと一回転した。そして、

並ぶ机の間をまるで、モデルのランウェイのように歩きながら、

教室中を1周した。すると、われこそはというオードリーが立ち

上がり、同じことをしようと、通路が数珠つなぎになるほどに教壇

近くに列をなして出て来た。


            


 「みなさん!」ブルーのアンサンブルの女性は教室の一番前に

ある電子ピアノの椅子の上に登ると、「無用な会議は止めて、

外の芝生でダンスでもいかがですか?私は実はプロのダンサーで

インストラクターもやっております。お教えいたしますよ!」その

掛け声に、一斉に十数人が立って、彼女の後について、教室の外の

芝生の中庭に出て行った。


 最後は、ただ、議長だけが『踊る会議』からひとり取り残された





  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

『パリで一緒に』の映画はミュージカルですが

何度見たことかしれません。このドレスが大好きなのです。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年4月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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