MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載522回
      本日のオードブル
習慣

第12話

「華菜と華麗なる5人」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただし
お酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



傾斜窓には
ジャガード織りの
ドレープカーテン
ベージュピンクの壁
花模様を織り込んだ
ベージュ色の絨毯の上には
クラシカルな猫足のソファが
優雅にクッションを抱いてます。
正面には暖炉とゴールドのミラー。
その左手奥は
ラベンダー色の
天蓋カーテンを垂らす
広いベッドルームです。
隅々まで手を抜くことなく
美しく整えられた部屋は、
隅々まで手を抜くことなく
整えるという習慣によって
作り出された部屋でした。
華菜はそんな習慣が何より
一番好きな習慣なのです。


 
      
  





       


第12話
  「華菜と華麗なる5人」


「ボンジュール、サバ?」「サバビアン、メルシー、エ、ヴゥ?」「セ、コンビ

アン?」華菜は独り言のようにつぶやきながら、ドアにカードキーをかざした。


               


 部屋に入るとまずは玄関のコンソールの上のCDデッキのスイッチを押した。デッ

キから「ボンジュール、サバ?」というなめらかなフランス語が流れ始めた。華菜

は「サバビアン、メルシー、エ、トワ?」と明るく返事をすると、傾斜窓のあるク

ラシカルなベージュピンクの部屋のソファの後ろにブランドの店の袋を置いた。そ

れから、廊下を曲がってクローゼットルームに入り、棚の上の同じ小さなデッキの

スイッチを押した。するとまた「ボンジュール、サバ?」「サバビアン、メルシー

エ、トワ?」が流れ始めた。華菜の新しい学びの習慣は半年続いていた。


               


 5日前、華菜の大仕事はやっと一段落し、この2週間はこのパリのスイートで過ご

す贅沢な休暇を得ていた。華菜はパリに来る半年前、あるきっかけから独学だがフ

ランス語のレッスンを始めた。それは企業合併によって今後フランス語圏の社長に

変わるという会社に派遣社員として仕事を始めたのがきっかけだった。


               


 その社長の交代に伴い華菜が配属された部署にもフランス語圏のエグゼクティブ

がトップとしてやってくる予定になっていた。1フロアを占めるその部には6つの

チームが入っていた。


               


 どんな切れ者のボスがやってくるのかという噂は日々、そして刻々と情報交換さ

れ更新されたが、関心事はそのトップエグゼクティブは人減らしをやるために、ま

ずはフランス語が話せないスタッフを外すのではないかということに集中した。さ

らに彼は長身で強靭な体格で強面という噂もあった。しかし、実はどれも真実では

ないことを華菜は知っていた。しかしそのためにスタッフは一喜一憂し、さらに右

往左往して仕事が手につかない者もいた。今はとにかく切れ味鋭い頭のいい人間ら

しいというところで落ちついているようだった。


               


 それからというもの、6つのチームを集めて3度全体会議が行われたが、議題

から外れた尾ひれのついた噂話にしだいに脱線していった。そのうち、60人のス

タッフのうち、ひとりが会社を去ると、続いて2人目が去った。そして3人目が去

った時、6つのチーム同士の協力体制と作業の効率化の話題がこの機に乗じて再燃

し始めた。同じフロアの隣同士のチームあるいは、3つずつの2チームに分けて事

務処理を一本化できないかということだった。さらに、備品の発注などの面倒なも

のも6つの部全体で曜日を決めて担当者が取りまとめるなどの細かな点についても

効率化の必要性が挙げられた。そして“予定通り”細かな決まり事のまとめ役&監

視員が必要という結論に達した。


               


 華菜は“予定通り”所属チームの「まとめ役監視員」に手を挙げ、全員一致で承

認された。そして他の5つのチームからも一名ずつ「まとめ役監視員」が任命され

6人は昼休みの前後30分ずつを延長して週1回、近くのホテルの会議室で会議を行う

ことになった。


               


 6人のまとめ役監視員は華菜のほか、玲奈、千田、ダディと呼ばれる段田、西航

(にしわたる)、そしてミッキーというあだ名のついた三木がいた。会を重ねるご

とに顧客の情報管理マニュアルの変更などの機密事項から、ファイリング、整理整

頓、お茶出しルールに至るまで、6人はスムーズに改革事項を追加していった。ス

タッフはまとめ役監視員の指示に従うことを先に約束させられていたため、スケジ

ュールに沿ってそれぞれが期日までに改変を行わねばなかった。しかも、その期日

は当然切迫していた。


               


 やがて、新体制の下では半分のスタッフに減らされるというのはやはり本当らし

いという噂が流れ始めた。その噂は冬の始まりに、ほほを切る冷たい空気がじっと

漂うようにフロア内に居座り、スタッフの緊張は日々高まって行った。そんな険し

い状況に嫌気がさしてか、また1人が会社を去り、そしてさらに2人が去った。


               


 しかし、6チームを統括する強面のトップがやってくる予定の1週間前になって

も、まだ作業は半分も終わっておらず、そして前々日の金曜日の夜になってやっと

目途が付き始めた。まとめ役監視員の6名は作業が終わったのを見届けてから退社

した。


               


 そしてその6人は最後のミーティングをあるゴージャスなレストランの個室でひ

そかに開いていた。6人は歓談しつつ、これまでの労をねぎらった。そして最後に

華菜が代表してスピーチを始めた。


               


 「この3か月間はほんとうにお疲れさまでした。予定通り、自然減によりまして

理想人員数を得ることが出来ました。さらに目標の大幅な業務の簡素化も予定通り

遂行出来ました。今はこの第一段階の試練を乗り越えたスタッフだけでも余裕でや

ってゆけると思います。これらの成果は、美しきご依頼主のボスにすべて報告済み

です」。パラパラと切れ味のいい拍手が起こった。「来週からはスムーズにご

依頼主にチームをお渡しいたしますが、みなさまはそれぞれの契約通り、決まった

日に社を去っていただきます。そしてその後は、新たなオファーに向けて再度チー

ム編成をいたしますまで、しばらくそれぞれ優雅な休暇を楽しんでくださいますよ

うに。そしてまたこのメンバーで別のオフィスでお目にかかることになる日を楽し

みにいたしましょう!」


               


 華菜と5人のメンバー6人は通称「華麗なる整理屋」と呼ばれる会社組織に属し

ていた。「それではみなさまそれまでこの6人の友情と団結にあらためて乾杯をい

たしましょう」


               


 今回の隠密業務整理の仕事により華菜は十分な報酬とこうしてフランス語を学ぶ

きっかけが与えられた。


               


 美しいジャガードのカーテン越しに暮れ始めた窓の外のエッフェル塔に、華菜の

ベージュピンクの唇は「ア・ヴォートル・サンテ」と艶のあるフランス語をつぶや

いた。


    



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

  リサコラムも今回で10年目になりました。
  自分自身がキムラリサコラムという感覚です。
  どちらも寄り添いそして分割できない存在になりました。
  10年毎週続けると
  こんな奇妙な合体が生まれるものですね。
  ご愛読にこころより感謝申し上げます。
  そして二宮様、毎回のご感想ありがとうございます。


 「もの、こと、ほん」は下の写真から。

            

p.s.2
    E-Book「
Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。

                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。




シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-               

(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      

Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。                                
    
    お申込はこちら→「Contact Us」           
                          

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.